不定愁訴は「首こり」が原因!?(depositphotos.com)
体がだるい、頭が重い、フラツキがある、寝付きが悪い、気分が沈むなどの「不定愁訴」は、どの診療科を回っても確たる診断が下されず、最後には心療内科へたどり着くことが多い。しかし心療内科でも、睡眠薬や安定剤などが処方される対処療法がなされるだけで、根本治療とはほど遠いのが現状である。
こうした不定愁訴の根底には、実は「首こり」があるのだという。専門的には頚筋(けいきん)が異常を起こすことで、副交感神経の働きが鈍くなるという。世界で初めて「首こり病」(頸性神経筋症候群)の診断法と治療法を確立した、東京脳神経センター・松井孝嘉理事長に話しを聞いた。
[an error occurred while processing this directive]首の筋肉の異常が、うつ状態や不定愁訴を招く
電車に乗っていると、ほとんどの人がうつむいてスマホを見ている。パソコンを見る際も、たいていの場合、下向き加減になる。これは首の筋肉の使いすぎを招き、副交感神経が働かなくなり不定愁訴につながるのだという。
「首の筋肉が異常を起こす原因には、主に3つある。1つめは、頭を打つ、むちうちなど外傷によるもの。2つめは、スマホやパソコンなどを長時間使うことによる首の使いすぎ。3つめは、元々首の筋肉が弱かったり、猫背などによるものだ」と松井理事長。
そしてスマホによる弊害を以下のように説明する。
「スマホが登場した頃から、首の筋肉に異常が見られる人が激増した。首の筋肉は、ある程度までは使いすぎても元の状態に戻るが、一定レベルを超えると固くなって伸び縮みできなくなってしまう。診察時に、骨や鉄のように首の筋肉が固くなっている人をよくみるが、ここまでくると元には戻らないので治療が必要になる。アメリカでもスマホの普及と比例するように10代・20代の若者の自殺率が急増しているが、その原因がわからないため問題になっている」
首の筋肉の異常が起きるのは、首の後ろ側にある太い筋肉。うつむきがちの姿勢を続けると、首をまっすぐにしている状態より、およそ3倍も首に負担がかかるのだという。ちなみに、頭の重さは平均的なボーリングの玉と同じ6キロ前後。頭を支える首が、うつむき姿勢のおかげで過度な負担にさらされているのだ。
ではどうして、首を使いすぎると不定愁訴につながるのだろうか?
「首を使いすぎて首の筋肉がこると、副交感神経がうまく働かなくなる。副交感神経とは、睡眠や入浴時などに活発になり、体をリラックスさせる自律神経。どうして首がこると副交感神経の働きが低下するのか、そのメカニズムはまだよくわかっていないが、臨床上、多数の症例で確認はできている。副交感神経がうまく働かなくなると、眠りが浅い、寝付きが悪い、疲れやすい、気分が落ち込む、やる気が出ないなどの症状が現れる。重度になると、うつ状態となり、重症になるとほぼ全員が自殺念慮を持つことも分かって来ている。これらの症状は他の疾患でも起こりえるため、誤診されている例がとても多い」
本当は首こりが原因なのに、他の疾患だと誤診されているものには、うつ病、頭痛、めまい、パニック障害、血圧不安定による脳内出血、慢性疲労症候群、更年期障害、胃腸障害、ドライマウス、ドライアイなどがあるという。
次のページでは、首こり病を起こしている人の特徴や見分け方について解説する。