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介護の現場が「施設」から「在宅」へ~医師は介護者目線に立った処方箋を

介護の現場が「施設」から「在宅」へ(depositphotos.com)

 2018年4月に診療報酬と介護報酬が同時改定された。それに先立ち、厚生労働省が開催した「医療と介護の連携に関する意見交換会では、以下のテーマが検討された。

●看取り
●訪問介護
●リハビリテーション
●関係者・関係機関の調整・連携

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 医療機関とケアマネジャー、通所リハビリ事業所、薬局薬剤師などとの連携を進めて、早期退院・在宅復帰、介護予防(要介護状態の維持・改善)、患者の希望に応じた看取り、処方の適正化を、国は推し進めようとしているようだ。

 ジワジワと「施設から在宅へ」と、介護の場を移行していこうとしている。

 重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしく過ごしていけるように、医療や介護、生活支援などが一体的に提供される、「地域包括ケアシステム」ができるのは素晴らしいことだ。

 しかし、自宅などで介護を担う「ケアラー」には、どのように影響するのだろうか?

 訪問診療も行っている「なごみクリニック」(熊本県熊本市)院長の亀川寛大医師は、「1日に何回も薬を飲ませなければならないことが、介護をしている家族にとって大きな負担になっているケースも多い」と語る。

 ケアラーにも仕事や学業など、日々の暮らしがある。介護の負担で押しつぶされないようにするために、どのような配慮が必要なのだろうか。亀川医師に話を訊いた。

心身の健康を崩したり社会から孤立するケアラーが増加

 ケアラーとは、高齢者や障害者などの介護を無償で行っている人たちのことで、主にその家族である。

 内閣府の「平成28年版高齢社会白書」には「要介護者等からみた主な介護者の続柄をみると、6割以上が同居している人が主な介護者となっている」と書かれている。このことから、ケアラーの多くが同居して介護を行っていると考えられる。

 住み慣れた家、友達もいる地域で過ごしたいという医療や介護を受ける人の願い。そんな願いをかなえてあげたいという家族の思い。少子高齢化による財源不足で、医療や介護の場を自宅に移したいという国の思惑――。

 三者の希望が合致して「施設から在宅へ」という流れができているのだが、介護の負担に追われ、心身の健康バランスを崩したり、社会から孤立したりするケアラーが増えているようだ。

 「ヤングケアラー」「ワーキングケアラー」のように、学校で勉強しながら、または働きながら介護し、学業や仕事との両立が厳しい状況に追い込まれている人もいる。

 在宅介護の場合、おむつ交換やトイレ介助などの「排泄介助」、立つ・座る・歩行などの「移動介助」、食事を食べさせる「食事介助」をケアラーが行う。

 さらに、介護を受けている高齢者の多くは、認知症やがんなど、なんらかの病気を患っている。そのために、薬を飲ませる「服薬介助」も必要になる。

 医師の指示どおりに間違いなく薬を飲ませたり、薬を嫌がっている状態でどうやって飲ませるのかを考えたり、神経をとがらせているケアラーも多いのではないだろうか。

 果たして、薬を処方する側の医師は、ケアラーの負担に気づいているのだろうか?

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