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サルを用いた実験で「自閉症遺伝子」の解明に〜霊長類モデルには倫理的問題も

倫理的問題も指摘される霊長類モデルの動物実験(shutterstock.com)

 サルによる実験で「自閉症遺伝子」が解明されるかもしれない――。

 中国の科学者たちによって「自閉症様の行動に関連する遺伝子」を保有するサルの作製が成功した。その研究報告がオンライン版『Nature』誌にて掲載された。共著者を代表して上海・中国科学院神経科学研究所のZilong Qiu氏は、「この遺伝子改変(transgenic)サルは今後、ヒトの自閉症を研究するに際して欠かせないモデルとなることは間違いない」と述べている。

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 ヒトの遺伝子疾患モデルとしては従来、マウスが多く使われてきた。だが、ヒトの自閉症における複雑な症状を再現するという点で自ずと限界があり、より優れた動物モデルの開発が広く望まれてきた。今回の研究では「MECP2」を組み込まれたサルが作製された。

発現抑制するMECP2の謎に迫れるか!?

 MECP2は、他の遺伝子の発現を制御する転写因子であり、神経細胞以外の細胞でも広く認められるが、どうしてMECP2の異常が脳神経に特異な疾患を引き起こすのかは、まだ解明されていない。

 自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder(s)、略称:ASD)は言語の使用が異常ないしは不全、儀式的な反復運動の症状や社会的関係が築けないなどの脳発達障害。前掲のMECP2が多いと、こうした自閉症と共通の障害がみられる「MECP2重複症候群」を発症する。

 この神経発達症候群は、重度(ないしは重度の)精神遅滞や乳児筋緊張低下、痙攣や軽度の顔貌異常、自閉症状や言語発達遅滞、進行性痙症や反復性感染症を引き起こし、男性のみが罹患する(女性例は稀)点も特徴である。また、患者の3分の1が独歩不可で半数が25歳以前に死亡する。

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