大人が子どもの視野を体験できる「チャイルドビジョン」
子どもの死因の上位には「不慮の事故」が常に挙がっている。厚生労働省「平成25年人口動態統計」によれば、事故の原因には「窒息」や「溺死・溺水」に次いで「交通事故」が多い。
いわゆる「飛び出し事故」が大半を占めるわけだが、事故につながる複数の理由のひとつに、子どもの「目」がある。
[an error occurred while processing this directive]視力は徐々に発達する
「見る」という行為には、6つの機能が必要だ。見たいものを正しく判断する「視覚情報処理」、見たいものが鮮明に見える「視力・色覚」、見たいものにピントを合わせる「屈折・調節」、見たいものの遠近感を把握する「輻輳両眼視機能」、見たいものに正しく視線を向ける「固視眼球運動」、見たい範囲が確保されている「視野」。これらすべてがバランスよく働いてこそ、「よく見る」といえる。
それぞれの機能は、生まれてすぐ会得しているわけではない。「視覚感受性期」と呼ばれる長い時間を経て獲得していくものなのだ。
生まれたての赤ちゃんの目は、眼球の器官はほぼ完成されているものの、明暗がわかる程度。生後3カ月になっても、視力は0.01~0.02しかない。人の顔とそれ以外もものの区別ができるようになり、動くものを目で追う「追視」も可能に。6カ月で両目の協調性が完成(視力は0.04~0.08)、1歳では奥行きや物の立体距離感が感じられ、ものの形の区別もつき始める(視力は0.2~0.25)。
大人並みの1.0の視力や機能を得るのは、個人差もあり、3歳~6歳といわれている。小学生以下の子どもに関して言えば、見る行為自体がまだまだ未熟なのだ。
子どもの視界は大人の6割
「視野」についてはどうだろう?
横浜市が考案した「チャイルドビジョン」は、児童心理学者ステイナ・サンデルスの実験結果をもとに日本のペーパークラフトデザイナーが制作したもので、大人が子供の視野を体験できるメガネだ。
サンデルスによれば、大人が並行視野150度・垂直視野120度に対して、6歳児は並行視野90度・垂直視野70度しかない。大人の視界の6割程度しか見えていないことになる。
実際に「チャイルドビジョン」をかけ、子どもの背丈(6歳児で約110cm)にあわせてみると、驚くほど視界が狭いことがわかる。横方向は顔の幅ほどしか見えず、真正面に顔を向けていると自分の足元になにがあるかなど全くわからない。
ちょっとのよそ見で、電柱にぶつかったり、すぐ転んだりするのも当然といえる。親が「よく見て」などと言ったところで、視界に入るものは限られている。