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「13歳までのヘッドマウントディスプレイの使用は危険」など~注目のニュース

子どもへの使用に注意したいヘッドマウントディスプレイshutterstock.com

●成長期の立体視細胞に大きな負担で障害

 11月7日、東京・御茶ノ水で開かれた「VRCカンファレンス2015」で興味深い発表があった。大阪大学の不二門尚教授(医学系研究科)は「小児の輻湊・調節、眼球運動の発達から見る年齢制限」と題した講演で、ウェアラブルコンピュータの一つであるヘッドマウントディスプレイ(頭部装着ディスプレイ)を13歳以下の子どもに使用するべきではない医学的な根拠が示されたのだ。

 Oculus RiftはPlayStation VRといったVRヘッドマウントディスプレイOculus社は、同社の新製品Oculus Riftの使用制限として、ガイドラインで13歳以下の子供の使用を禁止しているが、PlayStation VR、HTC Vive、Gear VR、Google Cardboardなど二眼(レンズが二つある)方式の製品に全て当てはまるので注意が必要だ。なども当てはまる。Amazonで“ヘッドマウントディスプレイ3d”を検索すると100件以上の商品が出てくる。急速に拡大しつつある市場のようだ。

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 ヒトが物を見るとき目は、近くを見るため水晶体が膨らむ「調節」、だんだんと寄り目になる「輻湊(ふくそう)」という処理が行なわれる。この2つの処理が共同して起こることが、立体感が生みだす支えとなっている。

 しかし、3Dヘッドマウントディスプレイでは、本来、見ている対象との距離と比例関係にあるはずの調節と輻輳が、スクリーンまでの距離が一定であり、現実に立体のものを見ている状態と矛盾が生じるため、個人差はかなりあるものの、疲労につながる。

 不二門教授によるとは、人間の目は2つのカメラに例えられ、両眼からの画像データを脳の立体視細胞で融合させることで立体感が生まれているという。しかも立体視細胞は成長と共に形成されるものなのだ。

 こうした無理な情報処理での負担が小さな子どもにさまざまな障害を生じさせる可能性があるという。

 紹介された子供の症例では、4歳11カ月だった当時、手術をするまで3カ月間斜視の状態が治らなかった。大人であれば2~3日で戻るが、発達期にある子供の場合、自然には元に戻らなくなってしまうという。

「6歳までの日常とは異なる輻輳関係系を求められる3D映像を使用するHMDの使用は慎重にした方がいい」、との注意を喚起している。

 ネットでは“ヘッドマウントディスプレイを買うお金がないから自作してみた”などという書き込みも散見できるが、こうした医学的な解説を知るにつけ、どれほど危険かは未知数で、発達期の子どもなどには絶対使えないと思える。

 次世代のウェアラブルデバイスとして大きな期待が寄せられるヘッドマウントディスプレイ。発達期の子どもへの使用には十分な注意が必要だ。

●重度視覚障害を乗りこえる視覚支援機器

 もうひとつ、目にまつわる話題が注目される。半導体レーザーのベンチャー企業「QDレーザ」(本社・川崎市)は、視覚障害者の視力を大きく改善させる臨床試験(治験)を、ドイツで行うと発表したのだ。この研究は、レーザー光を利用したメガネ型の視覚支援機器で、小型カメラで撮影した映像などをレーザー光で患者の網膜に直接投影するもの。網膜や角膜に障害がある重度の視覚障害者にも、鮮明な画像が提供できると可能性があるという。
 
 この研究は、東京大学の荒川泰彦教授らとの共同開発したもの。治験は網膜の中央部が傷つき、視野がゆがんだり暗くなったりする加齢黄斑変性の患者約100人を対象に実施され、来年末までに、欧州の医療機器認証の取得を目指すという。

 重度の視覚障害者にとっては大きな福音となる可能性がある。
(文=編集部)

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