糖尿病で足を切断するとどうなるか......。 shutterstock
いまや「国民病」ともいわれる糖尿病。厚生労働省の統計(2012年)によると、糖尿病とその予備軍は推計約2050万人にもなり、これは日本人の6人に1人という割合だ。
糖尿病の初期症状は、のどの渇き、頻尿、体重の急激な減少、立ちくらみ、手足のしびれなど。その多くが痛みなどの自覚症状がないため、治療が必要といわれていても治療を受けない人が多い。
[an error occurred while processing this directive]しかし、そのまま放っておくとどうなるか――。糖尿病の一番の恐ろしさは、糖尿病性神経障害や糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症といった合併症にある。
糖尿病の合併症で多いのが「糖尿病足病変」だ。合併症である糖尿病神経障害や動脈硬化などに起因する末梢動脈疾患(PAD)や閉塞性動脈硬化症(ASO)などにより、足の動脈が狭くなったり、詰まったりして、血液の流れが悪くなると、足の冷感、しびれや色調の変化(蒼白)、安静時疼痛などの症状が出る。それが重症化すれば潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)が生じ、最悪の場合は足の切断に至る危険性がある。
糖尿病による合併症を見逃さないために、ぜひ心がけてほしいのが「フットケア」だ。日本フットケア学会が提唱しているのは、毎日よく足を観察する、足の清潔を保つ、裸足で歩かない、足のタコやウオノメは病院で処置をしてもらう、足に合った靴を履くなど、いずれも簡単で日常生活の中で心がけたい事柄ばかりだ。
年間1万人が足を切断している衝撃の事実!
しかし実際には、糖尿病による合併症の診断・治療が遅れ、足の切断に至る人が後を絶たない。日本では推定で、60歳以上の約700万人が足の病変を発症し、年間1万人が重症化し、足を切断しているという。
糖尿病で足を切断するとどうなるか? QOL(生活の質)やADL(日常生活動作)が著しく低下するだけではない。足の切断後の5年生存率は、透析患者が14%、透析を受けていない人でも42%という報告がある。足の喪失は、生命の維持にも甚大なダメージを与えるのだ。
日本フットケア学会の熊田佳孝理事長は、「フットケアは糖尿病の患者や高齢者などのQOLを維持・向上させるために大変重要です。学会は、フットケアに関する優れた知識とスキルを持つフットケア指導士の認定試験を行っています。フットケアの専門外来を新設する医療機関も増えてきました。また、毎年2月10日を『フットケアの日』に制定し啓蒙活動を行っています」とコメントする。
足は「第二の心臓」とも言われ、血液循環の重要な役割を果たしている。足の切断という最悪の事態を招く前に、糖尿病患者、あるいは、その予備軍と診断された人は、意識的に足の変化を観察するよう心がけよう。
(文=編集部)