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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第48回】

バファリンで自殺未遂!急性アスピリン中毒で筋肉の細胞が溶ける危険性

市販の鎮痛解熱薬「アスピリン」の大量服用が重篤な結果を招く!(depositphotos.com)

 アスピリン(アセチルサリチル酸)は、市販の鎮痛解熱薬として広く用いられている。また医療施設での処方も多い。

 主な薬剤としては、「バイエルアスピリン(1錠中アスピリン100mg)」「バファリンA(同330mg)」などがある。これらの薬剤は、薬店で誰でも簡単に入手可能である。さらに最近では、インターネットでの販売も盛んに行われている。

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 今回は、わたしが最近経験した急性アスピリン中毒例を中心に解説し、同製剤の大量服用の危険性について指摘したい。

「バファリンA」を80錠を服用し救急搬送

 症例1:高校1年生男性。過去に精神科や心療内科受診歴はなかった。学校でいじめを受けたため嫌気がさして、自宅で市販薬「バファリンA」を80錠(アスピリン26.4g、528.0mg/kg相当)を服用した。その後、頭痛、嘔気、耳鳴、動悸、呼吸苦、発汗を訴えたため、両親が救急車を要請。服用後5時間30分に搬送された。

 搬送時は、意識清明、体温38.4℃、脈拍数は120/分、頻呼吸を呈した。諸検査で、腎機能は低下し、pHは7.181(正常では7.4程度)と酸性化していた。さらに横紋筋融解症を示唆する所見も得られた。

 横紋筋融解症になると、筋肉の細胞が溶けて壊死が起こり、筋肉成分のCPKやミオグロビンが血液中に流れ出てしまう。特に、ミオグロビンが腎臓に取り込まれて、尿が出にくくなり、急性腎不全に進展する。症状としては、倦怠感、手足のしびれ感、歩行不能などがある。重症例では、血液透析が有効な治療法である。

 ただちに急性アスピリン中毒を疑い、胃洗浄を施行後に血液透析を3時間行ったところ、pHは7.406と改善。また腎機能も正常となり、諸症状も軽快した。筋肉痛や倦怠感などの横紋筋融解症の症状も消失した。

 後日、判明したアスピリン血中濃度は、搬送時119.9 mg/dLより、透析終了後は17.7 mg/dL(常用量服用時の適正治療域血中濃度は10~20 mg/dL)と著明に減少した。患者さんは第3病日に無事退院した。

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