あなたの「幸せ」に必要な年収は?(depositphotos.com)
「もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である」――。
これは「日本資本主義の父」と称された官僚で実業家・渋沢栄一氏の有名な格言だ。3月15日の日本商工会議所の通常会員総会で、渦中の安倍晋三首相が、この言葉を引いて挨拶したニュース映像をご覧になった方もいるだろう。
[an error occurred while processing this directive]今回、紹介する最新の知見も、この渋沢氏の格言が訓えるところに適った話題かもしれない。調査を実施した心理学者ら曰く、「幸せになるために必要な収入には上限がある」というのだから――。
そんな誰もが気になる身近な話題についての論文が『Nature Human Behaviour』(1月8日オンライン版)に掲載された。執筆陣は米パデュー大学心理学部のAndrew Jebb氏を筆頭とする研究陣だ。
リア充にも沸点があるらしい
人は誰でも、現在と将来の「幸せ」を願わずにはいられない。何をもって「幸せ」と呼ぶかは十人十色であったとしても、「通常の幸福を手に入れるためには、自身(あるいは家族)の収入が多ければ多いほど良いに越したことはない」と考える人が大半だろう。
しかし、今回の研究を行なったJebb氏らが導いた結論はこうだ――。
「収入が一定額に達した場合、それ以上増えたとしても、その人の幸福度が高まるわけではない」
人間が「幸せ」だと感じるための必要な収入額に、はたして上限があるのか? そんな研究目標に挑んだJebb氏らは、米国の世論調査会社ギャロップ社が、世界164カ国の男女170万人以上を対象に行なった、大規模調査のデータを用いて分析を試みた。
彼らが注目したのは、次の2点である。
①人生に対する満足度(life eveluation)
自ら立てた目標や他者との比較において、自分の状況に満足している場合に得られる感覚。
②感情面での幸福感(emotional well-being)
「楽しい」とか「悲しい」など日々の感情が良好な状態。
では、それぞれの心理状態(リア充)を満たすためには、いったいどれくらいの収入が必要か?
Jebb氏らの解析が算出した結果は――
「①人生に対する満足度」を得るためには9万5000ドル(約1020万円)
「②感情面での幸福感」を得るためには6万~7万5000ドル(約640~800万円)
の収入が必要だという結果が示された。
日米間では、当然、物価も文化も暮らしぶりも違えば、為替レートの問題もあるので、この評価額の妥当性については別の機会にゆずろう。
ちなみに日本の平均世帯年収は「約550万円」であるから、「②感情面での幸福感」を得るには「もうひと頑張り」という感じだろうか。