欠伸はどうして伝染する?(depositphotos.com)
英ノッティンガム大学認知神経科学教授のStephen Jackson氏らの研究チームは、あくび(欠伸)の“伝染”を引き起こすのは、脳の「一次運動野」と呼ばれる運動機能を司る領域である可能性があるとする研究成果を『Current Biology」』8月31日オンライン版に発表した。
発表によれば、研究チームは、成人36人を対象に「あくび(欠伸)をしたくなっても我慢する」または「あくび(欠伸)をしたければしてもよい」のいずれかを指示した上で、人があくび(欠伸)をするビデオを見せた。
[an error occurred while processing this directive]また、参加者の様子をビデオ撮影し、口を開けてあくび(欠伸)をする回数と、あくび(欠伸)をかみ殺す回数を測定した。
さらに、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて、参加者の脳の運動野における興奮性を測定した。
その結果、ビデオで人があくび(欠伸)するのを見た時にあくび(欠伸)を我慢するのは難しく、我慢するように言われれば、あくび(欠伸)への衝動が強まることが分かった。
また、あくび(欠伸)の伝染のしやすさは人によって異なり、この現象は一次運動野での興奮性と生理学的な抑制に起因している可能性が濃厚だ。
あくび(欠伸)の伝染は、反響現象(Echophenomena)の1つと考えられている。反響現象とは相手の言葉や行動を無意識のうちに真似する現象だが、チンパンジーやイヌでも見られる。
さらに、反響現象はてんかんや認知症、自閉症、トゥレット症候群など、皮質の興奮性や生理学的抑制との関連が指摘されている病態にも現れる。そのため、これらの病態の理解を深めるためにも、今回の研究結果は意義がある。
Jackson氏らは現在、トゥレット症候群の患者の運動野での興奮性を抑えれば、チック症状を軽減できるか否かの研究を進めている。