目の病気にはどんなサプリが有効?(depositphotos.com)
米ワシントン大学眼科学のAaron Lee氏らの研究チームは、加齢に伴いリスクが高まる眼疾患の加齢黄斑変性症の患者の視力維持に有効とされる安価なサプリメントは、費用対効果にも優れているとする研究を『British Journal of Ophthalmology』8月23日号に発表した。
かつて米国で実施された加齢性眼疾患研究(AREDS)で有効性が示されたビタミンCなどの抗酸化物質や亜鉛が含まれたサプリメントは、片眼が滲出型(ウェットタイプ)、他眼が萎縮型(ドライタイプ)という組み合わせの加齢黄斑変性症の患者に使用すれば、高い費用対効果が得られることが分かっている。
[an error occurred while processing this directive]Lee氏は「このような患者では、より高価な治療が必要となる状態まで進行するのをサプリメントによって遅らせることができるかもしれない」と話す。
発表によれば、研究チームは、AREDSの研究データおよび英国の加齢黄斑変性症の前向き研究に参加した加齢黄斑変性症患者9万人以上のデータを活用し、AREDSで使用されたビタミンC、ビタミンE、ベータカロテン、亜鉛、銅を含有するサプリメントと、その後に実施されたAREDS2で使用されたビタミンC、ビタミンE、ルテイン、ゼアキサンチンを含有するサプリメント(以下、AREDSサプリメント)を55歳以上の患者に使用した時の費用対効果を分析した。
その結果、早期に治療を受けた患者ほど費用対効果が高いことが示され、片眼に滲出型黄斑変性が認められる患者は、さらに費用対効果が高かった。
また、サプリメントの使用によって、高価な抗血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の注射回数が生涯で約8回も減少するため、長期的には患者1人当たり数千ドルもの治療費の削減につながる。
Lee氏によると、加齢黄斑変性症は米国の高齢者に視力低下をもたらす主な疾患の1つで、その約10~15%を滲出型、約85~90%を萎縮型が占める。
米国ではAREDSサプリメントはプリザービジョンやPro-Opticなどの商品名で販売されている。販売価格は2カ月分(120錠)が約25~40ドル(約2,700~4,370円)なので、抗VEGF阻害薬よりはるかに安価だ。
一方、米ジョンズ・ホプキンズ大学眼科学教授のAlfred Sommer氏は「網膜疾患の専門医の間では、サプリメントの使用が適切と考えられる患者に勧めることは多い。しかし、現時点でサプリメントのベネフィットは明確ではない。AREDSは研究規模が小さかったため、偶然、サプリメントの有効性が現れたのかもしれない。したがって、コスト分析はあまり意味がない」と指摘する。