腰痛の治療は、まずはなんでも良いから体を動かすことからはじめてみよう(depositphotos.com)
最近、<慢性の腰痛がある人が、ヨガを行うと理学療法と同程度の症状の改善がみられた>という論文が報告された。
この研究の内容を要約すると、12週間にわたって「ヨガ」を行ったグループと「理学療法」を行ったグループは有意に疼痛が軽減されて、その成果は1年間維持されたというものである。
[an error occurred while processing this directive]しかしながら、その中には全く効果が出なかった人々も存在しており、ヨガと理学療法、どちらも完璧な介入方法ではないということも付け加えられていた。
この論文の報告より、どのようなことを考えられるだろうか?
私は理学療法士だが、「ヨガよりも理学療法の方が優れている!」と主張するつもりはない。この報告から示唆されるのは、極端にいえば「腰痛が改善する人は、理学療法でもヨガでも、なんでも良い」ということだ。
つまり、<介入する>こと自体で効果が出るのだ。
逆に改善しない人たちは、社会的な要因や心理的な要因によって腰痛が慢性化している可能性がある。ヨガや理学療法のような介入ではなく、全く違うアプローチをする必要があるかもしれない。
痛みの感じ方は人それぞれだから厄介
「疼痛(とうつう)」というのは主観的なものだ。客観的に評価することができない難しいものである。
たとえば、AさんとBさんを「5」の力で殴ったとしよう。ところが、Aさんは「7」の痛みを感じたと主張し、Bさんは「4」しか痛くなかった―-ということがザラ。痛みの感じ方は、人それぞれである。
痛みは定量化できないため、非常に厄介なのだ。
それと同じく、治療に対する反応性も人それぞれだ。同じヨガや理学療法を行ったとしても、「ものすごく効いた!」人もいれば、「全然効かない」という人もいる。前者は「思い込みが激しい」、後者は「鈍感」――というわけではない。
本当に違うのだ。これを医学的な専門用語で「治療反応性」という。
薬でも、効きやすい人と、効きづらい人がいるのを想像するとわかりやすいだろうか。はたまた、同じお酒の量を飲んでも、酔っ払う人と、酔わない人がいるのと似ているといえば、さらに想像がしやすいかもしれない。まったく原理が異なることなので、あくまでたとえとして。
よって、前述の研究結果は、治療反応性によって「効いた人には、ヨガでも理学療法でも効果があった、なぜなら治療の反応性が高い人だから」「どちらも効かなかった人は、治療に対する反応が悪いから」ということになる。