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【連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」第18回】

ダニが媒介する「牛肉アレルギー」〜血液型は必ずA型かO型、日本では島根県で多発

牛肉アレルギーの人の血液型は必ずA型かO型(depositphotos.com)

 糖質制限ダイエットや長寿者が肉食を愛好しているなどの健康情報、はたまた熟成肉ブームもあって、巷では肉食が人気だ。今回は意外な「牛肉アレルギー」について説明しよう。

 ウシ、ブタ、ヒツジなどの獣肉には「α-gal」というアレルゲン(糖鎖抗原)が含まれ、この抗原はヒトとサルを除く哺乳動物の血管内皮細胞に発現している。そして、牛肉や豚肉のアレルギーの症状は、肉を食べたあと3~6時間で「遅発性じんま疹」としてあらわれる。

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 2011年、米国で、牛肉アレルギーの発生地域が、マダニ(tick)によって媒介される「ロッキー山紅斑熱」と呼ばれる重症の「リケッチア感染症」の発生地域と一致することが報告された(「リケッチア」は節足動物によって媒介される小さな細菌の仲間)。

 そして、ヒトを吸血する「キララマダニ」の唾液中にあるα-gal抗原が動物の体内に注入されることが証明された。

 つまり、マダニに咬まれた人がα-gal抗原に感作(体内に抗原が入ること)され、のちに牛肉を食べたときに、アレルギー症状が出るというわけだ。

 マダニは草むらで待ち構える大型(体長は数mm~1cm)のダニで、ハウスダストやお好み焼き粉などの中に棲む小型ダニ(mite)と違って、肉眼でも容易に確認できる。もっともマダニには、幼生と若虫の時期もあり、いずれも吸血する。サイズの小さい幼生は肉眼的に確認しづらい。

 マダニは、ヒトや動物の皮膚に1週間ほど寄生し、産卵のためにたっぷりと吸血するが、宿主に気づかれないように痛み(かゆみ)止めと血液凝固阻害物質も皮膚へ注入する。ちなみに、マダニは種類が多く、ヒトを咬むマダニだけも日本には18種が知られている。

牛肉アレルギーの人の血液型は必ずA型かO型

 面白いことに、牛肉アレルギー患者の血液型は、必ずA型かO型で、B型、AB型の人はかからない。その理由は、糖鎖抗原であるB型血液型抗原の構造はα-gal糖鎖に側鎖としてフコースという糖が結合した形であり、α-gal抗原に対して免疫寛容状態になっているからだと考えられる。

 また、α-gal抗原は霊長類を除く哺乳類に限って発現するため、牛肉アレルギー患者が鶏肉や魚肉を食べても安全だが、カレイの魚卵に対してだけはアレルギー反応を示す。カレイの魚卵にα-gal抗原が含まれるためだ。

 このα-gal抗原に対するアレルギー反応は、IgE型抗体(アレルギー反応の主役となる免疫グロブリン)による反応である。不思議なことに、ヒトやサルの血清中には、IgG型ならびにIgM型の抗α-gal抗体が自然抗体として大量に存在している。しかも、この自然抗体はABO血液型に関係なく、すべてのヒトやサルが保有している。

 この抗α-gal自然抗体は、異種移植において「超急性拒絶反応」が生じる直接要因となっている。つまり、ブタの組織をヒトに移植すると、直ちに拒絶反応が生じる。抗α-gal自然抗体が、ブタ組織の血管内皮細胞を障害するからだ。なぜ、IgE反応だけが血液型依存性なのか、改めて自然の不思議さを感じざるを得ない。

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