東京都知事選に出馬した鳥越俊太郎さん(画像:youtubeより)
出馬表明会見の席上、その候補者へは、記者陣から当然の質問が飛んだ。「健康面は大丈夫なのか」「都知事という激務に耐えられるのか」――。
齢76歳の鳥越俊太郎氏は、こう応じた。
[an error occurred while processing this directive]「そう思われるのも当然ですね。僕は大腸がんから始まって、肺、肝臓と4回も手術し、大腸がんはステージ4でした。しかし、大腸がんからもう11年、最後の肝臓の手術から7年経っています。今が人生でいちばん健康といえるくらい、健康には気を遣っています」
5年生存率は完全クリアし、10年生存率にもあと約2年という東京都知事候補の鳥越さん。食生活に気を遣い、ジムにも週数回は通っている点を強調し、健康問題をこう締めた。
「がんの患者だからできないという偏見は捨ててください。がんの患者だからできることもあります。がん患者の就業率とか、がんサバイバーが元気に仕事ができる社会を作りたいです。がんの患者でも都知事ができるんだ、ということを見てもらえるかもしれない」
ちなみに、がんサバイバーながら、いくつもの内閣で閣僚を歴任してきた実績をもつ政治家はいる。『全身がん政治家』(2012年)を上梓した与謝野馨氏だ。
初当選の翌年(1977年)に発症した悪性リンパ腫に始まり、直腸、前立腺、下咽頭と、4つのがんと闘い続けてきた。近年では、がんサバイバー歴40年の体験を広く語っている。
国の目標である「受診率50%」も伸び悩み中
都知事選への出馬を表明した翌日、主要4候補が顔を揃えた公開討論会(於:日本記者クラブ)で、鳥越さんが掲げた主張はずばり、「がん検診100%」という実現への想いだった。
いまや国民の2人に1人が「がん」を患い、就労可能年齢(20~64歳)に限っても3人に1人の罹患率といわれる「がん大国」ニッポン。
くしくも今年は「がん対策基本法」の成立(2006年)から10周年に当たるが、厚生労働省によれば効果の程はあまり芳しくない。
がん患者で仕事を辞めた人の割合が2003年時点で34%、基本法成立以降の2013年の数字も同じ34%、ということだから何ら改善されていない。
また、主ながんの検診について基本計画が掲げた「受診率50%」という目標も、残念ながら伸び悩んでいる。
厚労省の研究班が昨年10~12月、国立がん研究センターなど3つのがん専門病院において、現役の就労時点で「がん」と診断された患者を調査した。その実態はこうだ。
① 「がん」と診断されて仕事を辞めた人が約2割
② ①のうち「診断確定時」「診断から最初の治療まで」の早期で退職を決めた人が4割
③ ②の理由は「職場に迷惑をかける」「両立の自信なし」の異口同音だった。
国の推計では、がん治療を受けながら働き続ける人の数は30万人超。一方で、前述③のような「同僚への遠慮」や「職場の空気を読んで」の依願退職や解雇されて離職するがん患者が3割強もいるのが現実だ。
こうした現状をふまえ、超党派の議員連盟(国会がん患者と家族の会)が準備中である「がん対策基本法改正案」が掲げるのは、がん患者の雇用継続に企業側が努めることを新たに定めるというものだ。