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その薬大丈夫? 認知症患者への向精神薬などの多剤併用がますます症状を悪化させている!

在宅認知症患者さんの多剤併用問題を指摘する高瀬義昌医師(shutterstock.com)

 認知症患者は10年後に800万人時代を迎えると言われる。しかし、ひとくちに認知症といっても類似の症状を示す疾病は70種類以上もある。しかも認知症は個別性が強く、高齢であれば他の持病も少なくない。いきおい大量の薬が処方されてしまうケースが増えてしまう。

 仮に家族があるいは自分が認知症になったとしたらどうしたらいいのか? 医師に言われるままに大量の薬を毎日飲み続け、ただ座して死を待つのみなのか?

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 10年以上東京都大田区で在宅療養診療所を開設した高瀬義昌医師はこのテーマと真剣に向き合い具体的な成果を積み上げている。

減薬することで夜間の異常行動が消失

 87歳のある男性患者さんは7年前に認知症と診断され、以来、奥さん(83歳)が一人で介護していた。いわゆる〝老老介護〟だ。かかりつけ医から処方される薬の数がどんどん増え、気がつくと20種類以上の薬を服用する日々になっていた。

「眠れているか?」「たまに眠れない日があります」「めまいはあるか?」「たまにあるようです」こんな会話のたびに薬の種類が増え、夫は薬が増えるに従い人格が変わってくる。もともとの温厚な人柄が姿を消し、いつも苛立ち怒りっぽくなっていく。

 5年前ごろから徘徊が酷くなり、1日に何度も家を出て奥さんが探し回るということが続く。たまりかねてかかりつけ医に相談すると、さらに2種類の向精神薬が追加された。

 しかし事態はさらに悪化していく。夫は夜中に目を覚まし大声を出す、手拍子で歌いだす、ベッドの手すりをトントンと叩き続けたりなどの行動で奥さんは眠れない日々が続く。

 しまいには奥さんに暴力まで振るうようになってしまい、突き飛ばされた奥さんが腰の骨を折る重傷を負ってしまう。周囲の知人から別の医師に相談するように勧められ地域包括支援センターを通じ高瀬医師が紹介された。

 高瀬医師が御宅を訪問したとき、2つの向精神薬、血圧を下げる薬3、胃腸薬4、前立腺肥大症の薬2、脂質以上の薬、関節痛の薬など全部で17種類を飲まされていた。最も多かったときには20種類も飲んでいたことが分かった。

 そこで、飲んでいた薬をすべて止め、新しい別の6種類の薬を処方しなおした。すると夫は睡眠薬を飲んでいないにもかかわらず自ら進んで布団に入り、朝まで熟睡、何年も続いていた夜の異常行動が消えた。目覚めた後もしっかりとした様子でデイサービスに通うようになったという。

 その1ヵ月後には徘徊もなくなり奥さんへの暴力も止まる。半年もたたないうちに血圧が正常値で安定し日常会話も普通にできるまでに回復した。

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