ロタウイルスは乳幼児が感染(shutterstock.com)
子どもが罹りやすい冬の感染症は少なくない。今回はロタウイルスが猛威をふるうロタウイルス感染症を説明しよう。
ロタウイルス感染症は、1~4月頃に主に6カ月~2歳の乳幼児が罹る頻度が高いロタウイルスによる感染性胃腸炎(流行性嘔吐下痢症)だ。乳幼児の冬の急性下痢症の8割以上を占め、5歳までにおよそ95%の子どもが少なくとも1回は感染するとされる。
[an error occurred while processing this directive]唾液や糞便などの排泄物から経口感染し、1~3日の潜伏期間を経た後、保育所、幼稚園、学校などで集団発生することが多い。電子顕微鏡で見るとロタ(車輪を意味するラテン語)に似ていることから、このような名称となった。
ロタウイルス感染症は、激しい嘔吐や下痢から突然始まり、糞便が米のとぎ汁のような白色になる。ロタウイルスは約1週間、糞便中に排泄される。下痢は1週間以内で軽快するが、発熱は続く。
下痢の回数が多いならば、脱水症状が現れるので治療が必要だ。電解質バランスの崩れ、痙攣、脳症、意識障害のほか、腸管の一部が腸管腔内に入り込む腸重積症を伴うこともある。腸重積症を起こすと腹膜炎を併発して死亡する場合もあるので、決して油断できない。
検査は、イムノクロマト法を利用した迅速診断検査薬による診断を行なうが、酵素抗体法を用いる場合もある。だが、ロタウイルスはA・B・C群があり、A群以外の発症頻度は少ないものの、一般の検査試薬では検出できない時がある。
脱水症状でも排尿があれば、尿中のアセトン体の有無と量で推定し、血液中の電解質を調べる。
治療は、嘔吐なら鎮吐薬を使用する。経口摂食ができるなら、少量で回数を多くするが、食塩とブドウ糖を混合して水に溶かした経口補水液を与える場合もある。経口摂食ができないなら、経静脈輸液による点滴治療を行わなければならない。
下痢には止痢薬は原則として使わず、ラックビーやビオフェルミンなどの生菌製剤を使う。
ロタウイルスのワクチン(タリックス/ロタテック)は、2011年11月から接種できるようになった。接種期間は、生後6週から24週まで。細菌性髄膜炎を予防するヒブ(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌、百日咳などを予防する四種混合ワクチンなどとの同時接種を考慮し、腸重積症の起こりにくい生後2カ月から1回目を接種し、4週間以上の間隔で2回目を接種することが推奨されている。
費用は2回で約3万円程度。市民団体などは、定期接種に組み込むように強く要望しているが、まだ実現していない。接種期間が短いので、赤ちゃんが生まれたら、早めにかかりつけの小児科医と相談し、接種スケジュールを立てたい。