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【シリーズ「最新の科学捜査で真犯人を追え!」第1回】

テレビドラマ『科捜研の女』『CSI:科学捜査班』でもお馴染みの科学捜査とは?

科警研が扱う守備範囲は広い(shutterstock.com)

 科学捜査(CSI:Crime Scene Investigation)。そのルーツをたどると、驚くべき事実が分かる。ヒントは文字だ。

 世界最古といわれるシュメール文字(楔形文字)が粘土板に刻まれたのは、およそ5500年前。2000年以上も昔の紀元前、古代ローマ帝国でも科学捜査の痕跡は数多く残されている。どのように文明が進んでも、古今東西、殺人、暴行、傷害、窃盗、誘拐、詐欺、偽造などの犯罪は性懲りもなく人生に降りかかる。人類の歩みは、人間の業ともいえる犯罪と闘ってきた歴史でもある。

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 たとえば、古代ローマ帝国皇帝アウグストゥスの時代、すでに筆跡鑑定は日常的に行われていた。都市文明が発達し、人口の都市集中が加速すると、公私にわたる人間関係を調整したり、権利義務関係を法的にコントロールする必要性が生まれる。だが、公文書、権利書、遺言書などの偽造や変造などの経済犯罪もはびこり、社会に混乱が起きた。筆跡鑑定は、公正な契約社会を保つために欠かせない社会の安全弁の役割を担ってきたのだ。

 日本の状況はどうか? あの小野小町が生きた平安時代も、私文書の偽造が横行し、印鑑や花押(かおう)の真贋を調べる筆跡鑑定が習慣化していた。

 ただ、科学捜査に科学技術(サイエンス・テクノロジー)の英知が吹き込まれるのは、1932(昭和7)年に起きたリンドバーグ愛児誘拐事件まで待たなければならなかった。この事件では、史上初めて犯人の声を照合する音声鑑定が使われている。

経験とサイエンス・テクノロジーを融合した鑑識は科学捜査の最前線!

 さて、最新の科学捜査は、どのように進められているのだろう? 大人気TVドラマの『科捜研の女』や『CSI:科学捜査班』でお馴染みのように、科学捜査は、刑事、鑑識官や科学捜査研究所(科捜研)、検視官が三つ巴になって真犯人を追いつめ、絞り込んでいく。架空のドキュメンタリー風に、科学捜査の流れをシミュレーションしてみよう。

 12月XX日深夜。けたたましいパトカーのサイレンが大都会の静寂を切り裂く。高層ホテルの密室で身の毛もよだつ血なまぐさい惨殺事件が発生した! ホテルからの110番通報で捜査一課の刑事、鑑識官、検視官が駆けつける。現場は血の海。被害者は、人気女優・麻香リリー(38)、仏ファッション誌『マリクレール』モデルのジャニス・ストーン(20)、ミステリー作家・九十九一馬(43)の3人。なぜ殺害されたのか? 凶器はない!

 まず鑑識官は、証拠の隠滅・消去・汚染を防ぐために客室の現場を保存し、立ち入り禁止にする。犯罪を立証するために現場を詳細に視察し、丹念に証拠収集に集中。血痕の付着した着衣、小物類、遺留品はもちろん、指紋、血痕、足跡、1本の毛髪も見逃さない。発見された証拠品は速やかに科捜研に送られる。損傷の激しい3人の遺体は、検視・司法解剖に回され、遺体の法医学的な解明、死因、死亡推定時刻、死亡状況、凶器の特定などが慎重に精査される。

 かたや刑事は、長年の経験で培われた読みを駆使しつつ、ホテル内や現場周辺の聞き込みに走る。防犯カメラの映像、ロビーや駐車場の不審人物の目撃、不穏な物音、犯人の逃走経路などを聞き込む「地取り(じどり)」、被害者の人間関係を調べ、被害者らを殺害する可能性のある人物を洗う「敷鑑(しきかん)」、遺留品や凶器の出所などから被疑者を割り出す「ナシ割り」などの多彩・巧妙な捜査手法を武器に、シラミつぶしに犯行のウラを取ながら、犯罪捜査をリードしていく。

 このように、刑事が手にした捜査情報、鑑識官や科捜研が分析した鑑定情報、検視官が解析した検視情報が渾然一体となった時、真犯人を特定する原動力になる。やがて事件の全貌や真犯人の残像が朧げながらも浮き上がる。科学捜査の本領が発揮される、まさに生々しい瞬間だ。

科警研や民間の科学鑑定機関も協力・連携して真犯人を追いつめる!

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