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【インタビュー 生活習慣病の発症は胎児期に決まる 第2回 早稲田大学理工学術院総合研究所・福岡秀興教授】

妊娠中は赤ちゃんの遺伝子機能を調整する葉酸、ビタミンB群、ビタミンDを積極的に摂ろう

妊娠中に子どもの病気リスクが生まれる!?shutterstock.com

「小さく産んで、大きく育てる」と生活習慣病を発症するリスクが高くなる――。福岡秀興教授(早稲田大学総合研究機構研究院)が唱える「成人病(生活習慣病)胎児期発症説(DOHaD説)」。母親の妊娠前、妊娠中の栄養状態、そして新生児の食生活が、子どもの一生の体質に大きな影響を及ぼすという。またこの変化は、世代を超えて伝達されていく。妊婦の栄養状況が遺伝子の働きを調整する仕組み(エピジェネティックス)にも影響を与えることを踏まえながら、「小さく産んで、大きく育てる」ことへの警鐘を、福岡先生が鳴らしている。

遺伝子の働きの変化は3世代まで続く!?

―胎児期の栄養環境の大切さは、遺伝子レベルから見るとどうなっていますか?
福岡:高血圧、糖尿病、心筋梗塞などの生活習慣病に関係する遺伝子の働きを調整するメカニズムの多くが、受精時、そして胎児期から生後1年ぐらいのあいだに決まると言われるようになっています。

 それは、DNA(遺伝子)の配列はそのままで、遺伝子の働きを調節するエピジェネティックスが、栄養状態により変化しているのです。この変化によって、胎児の体質が決定されていきます。このエピジェネティックスの変化は、世代を超えて続き、子ども、孫、曾孫と、ほぼ3代続くとまで言われています。

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―このようなエピジェネティックスの変化は、生後、成長してからも変わらないのでしょうか?
福岡:身体が成長してから、環境の変化によって起こるエピジェネティックスの変化は、一般的には環境が元に還ると元に戻ります。つまり、環境の変化によってエピジェネティックスは変化していきます。しかし、胎児期の低栄養によって生じたエピジェネティックスの変化は、変化しにくいという特徴があります。

―小さく産まれると、一生、病気のリスクを背負うということですか?
福岡:その可能性があります。ですから、妊娠前の栄養状態や子宮内の環境、出生後の育児環境をできるだけ良くしていくことが大切です。

 この研究の大きな目的は、将来の健康リスクが高いと思われる子どもに対して、どうすればそのリスクを低くできるかということです。また、別の面から見ると、生活習慣病のリスクが高い人が増えると、当然、医療経済的には大きな負担がかかる。その負担を軽減させるという側面もあります。まずは、健康に産まれる子どもが増えることを願って、多くの人々に、妊娠前、妊娠中、子育て中の栄養の大事さを理解していただきたいと思います。

―そのためには、母子手帳の必要性が、さらに高まるように思いますが?
福岡:母子手帳は、単なる記録として終わらせるのでなく、将来の健康を管理していく上でもとても大事です。出生体重は小さすぎても大きすぎても病気のリスクは高くなります。どちらの場合であっても、それぞれのリスクを知ることで、生活習慣を改善し、病気にかかる可能性も下げられる。その意味で、大人になっても自分の母子手帳を見直して、日常生活の健康維持に利用していただきたいですね。

 最近は電子母子手帳を導入する動きも活発になってきました。東日本大震災で被災した岩手では、電子母子手帳が普及していたため、震災後、すみやかに各々の妊婦の情報が確認されました。これは妊婦の健康管理の例ですが、母子手帳は生後さらには成人してからの健康管理にとっても重要な役割を果たすことになります。

高まる生活習慣病、先天異常,くる病などのリスク

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