とても複雑で高度な情報処理と反射運動
「AFCアジアカップ2015」で、日本は惜しくも敗れ去った。準々決勝のUAE戦は、最後の最後まで手に汗を握るPK戦。代表選手たちは、延長戦まで白熱した戦いを見せた。
PK戦で見せた、トップ選手たちの超人的な視覚による情報処理と反射運動。こうした情報処理は、目と脳が瞬時に行う。また、フィールド上でパスされてきたボールをどう扱い、次のパスをどうするのか、そのときの対戦チームの位置や動き、さらには得点ゴールのイメージを瞬時に判断し、運動機能に伝達する。とても複雑で高度な機能だ。
[an error occurred while processing this directive] 「目は心の窓」といわれているとおり、目は脳に直結している。目を覚ましてから眠りにつくまで、視覚から入る情報を脳は日々大量に処理する。「ものが見える」のは目だけによる機能ではない。ものに光が当たり、その反射を光として目の奥にある網膜に映す。ここでの目の構造はデジカメと同じだ。デジカメで撮った画像データをPCに転送するように、「神経ライン」を介して脳に情報が伝わる。
網膜に映った映像情報は、光受容器細胞で電気信号に変換され、視神経を通って大脳の後頭葉、視覚野と視覚連合野に届いて初めて「ものが見える」と認識される。そのため、「目が疲れたな」と感じたときには、両眼を閉じて「後頭葉」の辺り、目の真後ろの後頭部をマッサージすると気持ちがいいはずだ。
輪郭や色はどのように処理される?
よく知られているように、眼の神経は「視交叉」というポイントを通過するとき交差して伝わる。つまり右目の情報は左脳に、左目の情報は右脳に入っていく。これらの信号は、視床の後部にある外側膝状体にプールされて一次視覚野に伝わる。
一次視覚野は、コラムやプロップと呼ばれる層状の構造になっている。コラムはこの光信号がどの方向から来たのかという方位を処理したり、どちらの目からの情報なのかなどを処理する。一方プロップは、色を捉えてこの物体は何色かを処理する。
色や光の方向性がわかった信号は、特徴ごとに腹側視覚経路や背側視覚経路の2つの経路を通る。なぜ、脳の視覚機能は2重構造なのだろうか。これは体に対する危険をいち早くキャッチして、次の反射的な運動を判断するためだ。まず光の方向性と色をキャッチする必要性から生まれた、脳の高度な機能ではないかといわれている。
「ものが見えない」という訴えの裏に......
眼科医院では、「ものが見えづらい」という症状には、まず視力、視野、色覚などの検査を行う。続いて、視神経や後頭葉までの経路を調べるため、MRI検査なども行う必要がある。
つまり「本当に見えていない」のか、「見えないと感じている」のか、の原因を探るのだ。たとえると、デジカメの故障か、PCの故障か、はたまたその間のライン障害なのかをつきとめるのだ。
怖いのは、「ものが見えない」原因に生命にかかわる病気が潜んでいることだ。 "PC側の故障"である。疑われるのは、脳梗塞や脳出血。視神経の近くに脳梗塞や脳腫瘍があると、視野が半分見えなくなることもある。また、脳動脈瘤が視神経を圧迫すると、瞳孔が拡大したり、まぶたが下がってくる障害を生じることがある。
視神経以降は脳の領域になるので、眼科と脳外科、脳神経科などとの診療科連携も必要になってくるので厄介だ。視覚と脳の高度な処理については、未解明な部分もあり詳細な研究が待たれる領域でもある。視覚の異常を軽く考えてはいけない。
(文=編集部)