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風邪に抗菌薬は効かない! 脱却しなければならない「念のため医療」

改めて確認、風邪と抗菌薬の関係

「風邪薬をください。」とお願いして、「風邪に効く薬などはない。」と説明を受けたことはあるだろうか。

 冬になるとテレビでは「早目の○○○○」や「絶対に休めない人~」など総合感冒薬のCMが目につく。あれは風邪薬ではないのか?と思うのではないだろうか。そして医療機関でも風邪症状で受診した際に確かに薬が処方される。

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 真実はこうだ。いわゆる「かぜ」とはウイルスが原因で鼻汁、咽頭痛、咳、痰などの症状をもたらすものであり、ライノウイルスやコロナウイルスなどが原因となることが多いがその他にも原因となるウイルスは多数ありそれらウイルスに対する特効薬(抗ウイルス薬)は存在しない。(抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 - 厚生労働省)
(ウイルスでもインフルエンザウイルスにはその増殖を抑制するなどの働きを持つ抗インフルエンザウイルス薬が存在する。)(蛋白質 核酸 酵素Vol.54.No.10 P.1284-1291(2009) )

 それら「かぜの原因となるウイルスによってもたらされる鼻汁、咽頭痛、咳などの諸症状を緩和する薬」が感冒薬として使われているだけで根本的なウイルス治療は自己の免疫力で治癒を期待するのみである。

安易に抗菌薬使用が招く3つの危険

 また、風邪に効く薬と言うほど直接的ではないとしても、以下のような要望を聞くこともある。
「のどがすっきりしません。咳も続き、痰も切れにくいんです。あのバイ菌のクスリ、以前良く効いた気がしますから出してもらえないでしょうか。」
これは、つまりかぜ症状に対して抗菌薬の飲み薬を使いたいという要望である。

 抗菌薬は細菌の感染症治療に用いられる。(微生物が作った抗菌薬を抗生物質、抗生剤と呼ぶこともある。)http://amr.ncgm.go.jp/general/1-1-3.html
これらが「かぜ」の原因であるウイルスに効果を持たないのは上述した通りである。

 長びく咳、膿性の喀痰、発熱などから肺炎と診断された場合にはもちろん適切な抗菌薬の使用は必要である。しかし、いわゆる「いつものカゼ症状」には抗菌薬は不要なのである。

 私が医師に成り立ての頃、二十年以上前の話だが、よくこのような抗菌薬に対する要望を聞いた。最近こそ、その要望は減ったがまだ依頼されることもある。かくいう私も医師に成り立ての頃は今ほど抗菌薬の使用基準を厳格なものととらえていなかった節があり今となっては反省する点がある。

 明らかにカゼ症状の患者に対してはその症状をやわらげる消炎剤や鎮咳剤の服用を提案するが、「とは言っても前回は効いた気がしますし、もし菌が『悪さ』をしたら困るので予防で使っておくほうが安心でしょう?これまで使って特に問題はなかったですし。」と抗菌薬処方を頼まれることもある。もっともらしい意見である。

 しかし実は安易に抗菌薬を使うことは多数の問題をはらんでいるのである。
1、風邪から肺炎になることを予防できてよかったという可能性は極めて低いこと
2、抗菌薬も短期的には嘔吐、下痢、皮疹などの副作用は少なくないこと
3、そして長期的にその抗菌薬が効かない耐性菌が出現すること
などが問題となる。(抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 - 厚生労働省)

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