女性の「万引き依存症」は精神的な病理に根ざしている(depositphotos.com)
万引きがどうしてもやめられず、捕まって罪に問われながらも、また犯行を繰り返してしまう――。「万引き依存症」、あるいは「クレプトマニア」といわれるその状態が、ひとつの病気として認識されてきたのは最近のことだ。
万引き依存症患者のための専門外来を設けている、大森榎本クリニック(東京都・大田区)の精神保健福祉士・社会福祉士である斉藤章佳氏のインタビューは、これまでにも本誌で掲載してきた。
[an error occurred while processing this directive]その斉藤氏による新著『万引き依存症』(イースト・プレス)がこのたび刊行された。万引き依存の全体像を網羅した、患者や家族のみならず、この問題に関心のある人にとって、とても役立つ内容となっている。
患者の7割は女性
本書で特に目を引くのが、女性の万引き依存症患者がいかに多いか、ということ。斉藤氏が勤務する大森榎本クリニックの万引き依存症専門外来に来る患者のうち、実に71%は女性だという。
本書に引用されている犯罪白書の数字によると、平成28年に認知された万引きの件数は11万2702件。実に1日に300件以上の万引きが起きていることになるが、これはいわゆる警察沙汰になった件数。
実際には万引きを見つけても、本人との話し合いで済ませ、通報しないケースも多いことを考えると、実際の件数はこれを遥かに上回る。
そして、万引き犯の男女比としては、平成26年版犯罪白書によると、前科のない万引き事犯者として調査対象になっている人の数は、男性317人、女性229人と男性のほうが多い。
では、なぜ大森榎本クリニックの通院患者は、女性のほうが多くを占めるのだろうか? その理由は「当院は盗むことをやめたくてもやめられない、万引き依存症に苦しむ人たちを受け入れている」ことにあると、斉藤氏は本書で分析する。
女性の万引きは、換金などの金銭目的ではなく、複雑に絡み合った精神的な問題に根ざしていることが多いのだ。