年間3000~5000人の国内の乳がん患者が手術不要に(depositphotos.com)
10月1日(ピンクリボンデー)から乳がん月間(乳がん早期発見強化月間)がスタート。乳がんの正しい知識を広め、乳がん検診の早期受診を推進・啓発するピンクリボン(Pink ribbon)運動が世界で展開されている。
日本では、NPO法人「J.POSH」(日本笑顔と幸せのピンクリボン)などの諸団体が活動中だ。「あけぼの会」は、10月1日を「乳がん検診の日」と決め、乳がんに対する不安や疑問を持ちながら、病院に行くのをためらったり、どの病院へ行ったらよいか迷っている女性に、専門医をホームページ上で紹介しながら、積極的に検診を受けるようにアピールしている。
[an error occurred while processing this directive]日本人女性のおよそ11人に1人が乳がんに
国立がん研究センターの「がんの統計'16」によれば、日本人女性のおよそ11人に1人が乳がんにかかる。乳がん患者は約8万9400人、死亡者数は約1万3800人に上る(2015年)。
乳がんは、女性の部位別がん患者数が1位、死亡者数が5位。30歳代から急増し、50歳代までの働き盛りの世代に多く、50代女性のがん死亡原因のトップだ。
ステージⅠ期で発見すれば、10年生存率は90%以上になる。だが、ステージの進行につれて生存率は、どんどん低下する。したがって、早期発見、早期治療が何よりも肝要だ。
40歳になったら、年1回のマンモグラフィー検診(乳腺・乳房専用のレントゲン検診)を定期的に受けよう。また、若い女性でも、気になる症状やしこりがある場合は、乳腺外来のある医療機関を受診してほしい。
乳がん患者の5%(およそ3000~5000人)の手術が不要に!
さて、ピンクリボン運動を一気に盛り上げ、乳がんに悩む多くの女性たちを元気づける希望に満ちたニュースが2つある。
国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の向井博文・乳腺・腫瘍内科医長らのグループは、乳がんのうち、手術が不要で完治するタイプの判定に役立つマーカー遺伝子を世界で初めて発見し、9月から効果検証に向けた臨床試験を開始した(2017年9月26日 読売新聞)。
発表によれば、これまで乳がんに抗がん剤治療と放射線治療を行った後、乳房の切除手術をしなくても、がんが消失するかを判定する臨床試験を実施してきた。
その結果、乳がんに特徴的なタンパク質「HER2」の発現があり、ホルモン療法が効かないホルモン陰性なら、半数以上の患者は、手術せずにがんが消失した。
がんが消失したグループは、遺伝子「HSD17B4」が働かない事実が判明したことから、遺伝子「HSD17B4」は、手術が不要な乳がんを判定するマーカー遺伝子として有効である可能性が高い。
今回の臨床試験は、乳がんに特徴的なタンパク質「HER2」が発現し、しかもホルモン療法が効かないホルモン陰性で、かつ離れた臓器に転移がない乳がん患者200人に限定して行われる予定だ。
まず、約30の拠点病院で患者のがん細胞を採取し、遺伝子「HSD17B4」の働きを解析後、抗がん剤治療と放射線治療を行い、がんが消失しているかを手術で判定する。
乳がんは、転移がある場合を除き、原則として手術を行う。この遺伝子「HSD17B4」の有効性が確認できれば、乳がん患者のおよそ5%(3000~5000人)の手術が不要になるという。
さらに別のタイプの乳がんや卵巣がんなどでも、この遺伝子「HSD17B4」で手術が不要になる人が分かる可能性があり、患者の負担減や医療費抑制にもつながると期待される。