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「ゲノム医療」が創薬と再生医療で難病に挑む!「iPS細胞」を活用した治験もスタート!

「創薬」と「再生医療」というゲノム医療の両翼が動き始めている(depositphotos.com)

 必要は発明の母、挑戦は進化の父――。

 日々加速する「ゲノム医療」のイノベーションは、まさに必要と挑戦の大釣果だと実感させられる。「創薬」と「再生医療」というゲノム医療の両翼が、逞しく動き始めているからだ。

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がん患者の遺伝子変異に有効な「分子標的薬」の治験がいよいよスタート

 まずは「分子標的薬」の創薬だ。

 国立がん研究センター(東京)は、患者が少ない肉腫や脳腫瘍などの希少がんに対する新たなゲノム医療の産学共同プロジェクトを立ち上げ、がん患者の遺伝子変異に有効性が見込まれる「分子標的薬」を使った臨床試験(治験)を、この秋から進めると発表した(「読売新聞」2017年7月31日) 。

 遺伝子変異をターゲットにがんの増殖を防ぐ「分子標的薬」は、がんの種類は異なっても遺伝子変異が同じであれば、同一の「分子標的薬」が有効であるケースが多い事実が判明している。

 国立がん研究センター中央病院は、2013年から、がんに関連する100種類以上の遺伝子変異を解析してきた。共同プロジェクトは、遺伝子変異タイプが判明した希少がん患者を対象に、がんの種類に関係なく、それぞれの遺伝子変異タイプに対応する「分子標的薬」の治験を進める。合わせて、希少がんの遺伝子変異と患者情報を登録したデータベースを構築し、継続して新規の治験が実施できる態勢も整備する。

 京都大学病院も今年度中にプロジェクトに参入し、治験薬や共同研究費を提供する製薬企業は11社が参加する予定だ。

 国立がん研究センターの中釜斉(ひとし)理事長は、患者の少ない希少がんは、企業の参入が少ないため、治療薬の開発が遅れがちだが、プロジェクトを通じて企業と連携し、積極的に開発を進めたいと、読売新聞の取材に対して語っている。

細胞増殖に関わる分子だけをピンポイントで阻害するため、有効性が高く、副作用が弱い

 「分子標的薬」は、がん細胞の特異的な性質や機能(作用機序)を活用し、ゲノムレベルや分子レベルで効率よく作用するように開発した薬だ。「低分子医薬品(低分子化合物)」と「抗体医薬品(モノクローナル抗体)」に分かれる。

 「分子標的薬」は、がん細胞を狙って作用するので、副作用を抑えながら治療効果を高めることができる。たとえば、血液のがんである白血病(慢性骨髄性白血病)や消化管間質腫瘍の治療薬「イマチニブ」は、異常なたんぱく質の働きを阻害し、がんの増殖を抑える。

 つまり、「抗がん剤」は細胞傷害を狙うが、「分子標的薬」は細胞増殖に関わる分子だけをピンポイントに絞り込んで阻害するため、有効性が高く、副作用が弱い。

 このような「分子標的薬」の開発が進めば、入院が必要な患者でも、通院治療や在宅治療ができるので、患者が高いQOL(生活の質)を保ちながら治療に専念できる大きなメリットがある。

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