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【シリーズ「脊柱管狭窄症をもっとよく知る」第1回】

「脊柱管狭窄症」の原因はPC・スマホ、車の運転!? ストレートネックから難病に!

脊柱管狭窄症の患者は背骨の「S字カーブが崩れている」のが特徴(depositphotos.com)

 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は、先天的または後天的に脊柱管が狭くなり、脊髄や神経が圧迫されるために、腰椎(ようつい=背骨の腰の部分)や頸椎(けいつい=背骨の首の部分) の脊柱管に病変が現れる難疾患だ。

 清水整形外科クリニック(埼玉県さいたま市)の清水伸一院長は、脊柱管狭窄症の患者への聞き取り調査を行い、「脊柱管狭窄症は、腰椎や頸椎だけでなく、胸椎(背骨の胸の部分)、足の四つの部位の異変が密接に関連する全身病」と結論づけている。

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脊柱管狭窄症は、腰・首・胸・足の4大異変が招く全身難病

 脊柱管狭窄症の原因は何か?

 背骨を横から見ると、ゆるやかにS字カーブ(ナチュラルライン)を描いており、腰椎と頸椎は前方へゆるやかに弯曲し、胸椎は後方へ弯曲している。

 背骨のS字カーブは、およそ5~6kgもある重い頭や上半身を支え、足から受けた衝撃を吸収・分散させるので、背骨の椎骨や靭帯(骨と骨をつなぐ線維組織)、椎間板(椎骨間のクッション組織)の損傷・劣化を防いでいる。

 だが、脊柱管狭窄症の患者の背骨は、「S字カーブが崩れている」のが著しい特徴だ。

 つまり、腰椎は前弯が失われ硬直(腰曲がり)し、頸椎は前弯が失われまっすぐ頸椎(ストレートネック)になり、胸椎は後弯がひどくなる曲がり胸椎(ネコ背)の状態に陥っている。

 その結果、背骨にかかる負荷・衝撃が増すため、特に負荷がかかりやすい腰椎に病変が生じる脊柱管狭窄症の発症につながる。

前かがみ姿勢、まっすぐ頸椎、ネコ背、加齢による筋肉や骨の衰弱も原因

 なぜ背骨のS字カーブが崩れるのか? 加齢による筋肉や骨の衰弱が大きく関係しているが、特に、パソコンやスマホ操作などによる長年の悪い姿勢(前かがみ姿勢)を続けると、背骨のS字カーブが崩れやすくなる。

 前かがみ姿勢になると、狭まった脊柱管が広がり、神経への圧迫が弱まるため、足腰の痛み・痺れなどの症状が緩和されるが、長時間にわたって頻繁に前かがみ姿勢を続けると、背骨まわりの筋肉が硬直し背骨のS字カーブがますます崩れるので、脊椎の神経の流れが悪くなり脊柱管狭窄症が悪化する。

 頻繁な前かがみ姿勢が続くと、上半身が前傾し、体の重心が前方へずれるので、爪先だけで体重を支える爪先重心の状態になるため、前かがみ姿勢がさらに強まり、脊柱管狭窄症が悪化する。

 さらに前かがみ姿勢が続けば、上半身の重みを分散する腰椎の弯曲が失われ、自然なS字カーブが崩れるので、骨盤が傾き、殿部や足の背面の筋肉・靭帯が硬直するとともに、腰椎の脊柱管が狭まるため、脊柱管を通る神経が圧迫されて坐骨神経痛を伴い、脊柱管狭窄症が悪化する。

 一方、前かがみ姿勢が続くと、常に首や肩の後ろ側の筋肉が緊張した状態になり、頸椎の前弯が徐々に失われる、まっすぐ頸椎(ストレートネック)になるため、脊柱管狭窄症が悪化する。

 まっすぐ頸椎は、パソコン操作、車の運転、携帯メールの使用、読書、料理など、日常的に前かがみ姿勢が多い人にも起きやすいので要注意だ。

 このようなまっすぐ頸椎は、頸椎症(変形性頸椎症)に分類され、頸椎症性神経根症と頸椎症性脊髄症を併せて頸部脊柱管狭窄症と呼ばれる。

首・肩・腕・手の痛みや痺れで箸がうまく使えない

 頸部脊柱管狭窄症は、首・肩・腕・手の痛みや痺れを伴う。たとえば、箸がうまく使えない、服のボタンをかけられないなど、手や腕に不自由を感じる。重度の頭痛・肩こり・耳鳴り・めまいなどの症状が現れる場合もある。

 また、まっすぐ頸椎によって頸椎のクッション機能が失われると、頭の重量が頸椎にダイレクトに加わり、頸椎の前部に負荷がかかって変形するので、椎間板が後部へ押し出され、頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症を発症し、脊柱管狭窄症が悪化する。

 さらに、頻繁に前かがみ姿勢が続けば、胸椎(背骨の胸の部分)に後弯が過度に強まる曲がり胸椎(ネコ背)が起きるため、胸椎は背骨にかかる負荷や衝撃を吸収・分散できなくなり、椎骨、靭帯、椎間板への負担が増すので、背中や肩のこり・痛み・痺れが強まり、脊柱管狭窄症が悪化する。

 また、曲がり胸椎(ネコ背)によって、胸椎の後弯が過度に強まると、肺が圧迫されて呼吸機能の低下や酸素不足、胃腸の血流悪化や消化不良、骨や神経の修復阻害を招くことから、肩こり・慢性疲労・肥満・集中力の低下・冷え・便秘・生理不順・生理痛などに陥る。

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