がんの的中率がほぼ100%というがん探知犬(depositphotos.com)
この4月、閑静な山懐の町がにわかにスポットライトを集めている。山形県金山町。北に湯沢町、南に新庄市。白壁の町並や石造りの用水路が美しい四季奏でる人口5600人余りの町だ。
金山町は尿の臭いかぎ分けて、がんの有無を早期発見するがん探知犬による検診を全国に先駆けてスタートしたからだ。
[an error occurred while processing this directive]内臓がん、皮膚がん、白血病などをほぼ100%嗅ぎ分ける
報道によれば、町の健康診断の受診者のうち同意を得た人を対象に、町立金山診療所が検体となる尿を採取・冷凍し、日本医科大学千葉北総病院(千葉県印西市)に送る。がん探知犬は、試験管に入った検体の尿を嗅ぎ分け、がんに罹患していると判断した時は、振り返って担当者に伝える。
病院は、尿に含まれる臭い物質をガスクロマトグラフィー(気化しやすい化合物を同定する精密分析機器)で解析し、がんの有無を判定したうえで、約3カ月後に陽性か陰性かの判定結果を金山診療所に通知する。健康診断に併せて、がん検診にがん探知犬を利用するのは全国初の試み。効果が確認できれば、がんの早期発見につながる。
2010年以来、千葉北総病院の宮下正夫副院長(外科学)らは、がんが発する臭い物質の解析法、がん探知犬の能力開発などを探求してきた。病院と提携するセントシュガーがん探知犬育成センター(佐藤悠二所長/千葉県館山市)が育成しているがん探知犬は、現在5頭が探知できる状態で待機中だ。
金山町は、県内でも胃がん死亡率が高く、特に女性の胃がん死亡率は全国ワーストであることから、がん探知犬による検査に踏み切った。昨秋、鈴木洋町長は町に講演に来た宮下教授に協力を要請し、病院への委託料など約1100万円を今年度予算に計上したため、検査を受ける町民の自己負担はない。
鈴木町長は、がんの早期発見、受診者の負担軽減につながる可能性が高く、住民が元気で暮らす福祉対策の第一歩になると期待を寄せる。
宮下副院長によると、がん探知犬は、内臓がんから皮膚がん、白血病などの血液がんまで、ほぼ100%の高精度で嗅ぎ分けられるので、住民は尿を提出するだけで、がんの有無と種類を絞り込めるとメリットを強調する。