インフォームド・コンセントは「言うはやすく、行なうはかたし」(shutterstock.com)
「インフォームド・コンセント」や「インフォームド・チョイス」がもっとも進化している乳がん治療の現場では、乳がん告知のあと、生命予後や治療成績、その副作用・後遺症が説明されつつ、いくつかの「治療の選択肢」が提示される。
そして、医師に「来週までに、ご自分で決めてきてください」と言われる。
[an error occurred while processing this directive]たしかにマニュアル通りなのだが、これでは知識に乏しい患者にとって、あまりに酷な要求である場合が少なくない。パニック状態に陥る患者さんがいても、ちっとも不思議ではない。
実態は、<よくわからないが同意しないと先に進まない>
インフォームド・コンセントは「言うはやすく、行なうはかたし」が実態に近い。
医療者側から見ると、説明文を準備した上で患者さんに医療の内容を説明して同意書にサインをもらえば(ICを確認すれば)一件落着。何か不都合があれば、その書類がそのときものをいう、といったところが実感・実態に近い。
一方、患者さんにとって、インフォームド・コンセントに基づくインフォームド・チョイスは明白な「患者の権利」だ。とはいえ、多くの難解な医学用語を交えた説明を突然受けた患者さんは、「よろしいですね」もへったくれもない。
「よくわからないけれど、同意書にサインをしないと先に進まない」と感じるのではなかろうか。
多くの場合、この現実はどうしようもない。医学知識はとても広範かつ複雑で、ちょっとやそっと勉強したくらいで簡単にわかるようなしろものではない。圧倒的な医学知識の落差を埋めて、医師の言うことを100%理解することは、まず絶対に不可能! といってもいい過ぎではない。
患者さんと直接お話しするとき、「もっとよく知りたかったら、ぜひ医学部に入学してください」と冗談を飛ばすことがある。