非アルコール性脂肪性肝疾患の患者が10年間で約3倍に(shutterstock.com)
お酒をよく飲む人は、肝臓に脂肪が溜るため、肝臓機能障害や脂肪肝などを指摘されることが少なくありません。
ところが、お酒を飲まない人でも肝臓に脂肪が溜まる、「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」という病気があります。
[an error occurred while processing this directive]健康診断でよくあるのが、次のような医師とのやりとりです。
「○○さんは、お酒を飲みますか?」
「ええ、ほぼ毎日飲みますね」
「お酒の飲みすぎで肝臓に脂肪が溜まっています。飲酒はほどほどにしてくださいね」
この「ほどほど」は、医学的に1日1~2合を指しますが、酒飲みがそれを守るのは至難の業。医師自身が<酒飲み>だと厳格な指導をするが心苦しいのか、「ほどほど」というコトバを使うのです。かくいう私もですが……。
一方で、「私は全く酒を飲みません」という人もいます。そのような人に対して医師が告げる診断名は、「非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease)」。英語名の頭文字をとって「NAFLD」と呼ばれ、近年その患者数は増加しています。
今回は、非アルコール性脂肪性肝疾患を予防・治療する重要性について説明します。
10年間で約3倍に増加した非アルコール性脂肪性肝疾患とは?
「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」とは、普段はほとんど酒を飲まないのに、超音波やCT、あるいは組織検査で脂肪肝が認められ、かつ、ほかの原因となる肝臓の病気が否定された状態である。
最近の調査では、日本人のなんと29.7%がこの病気に羅っており、国内に2000万人以上の患者がいます。ほかのアジア諸国でも同様の割合で患者がいるそうです。ちなみに、欧米諸国の有病率は20~40%の間です。
驚くべきことは、近年、この病気の患者が増え続けていること。ある研究によれば、日本では10年間(1994〜2004年)で約3倍に増加したといいます。その背景には、肥満者の増加が関係しています。
「メタボリックシンドローム」と呼ばれる病態は、内臓脂肪型肥満(ウエストの周囲径が、男性は85cm以上、女性は90cm以上)に加えて、高血圧(135/85mmHg以上)、高血糖(空腹時110㎎/dl以上)、脂質異常症(中性脂肪150㎎/dl以上、または、HDLコレステロール40㎎/dl未満)のうち2つを合併した状態です。
このメタボの状態を肝臓から見たのがNAFLDです。すなわち、内臓に脂肪が蓄積するような過剰な脂質の摂取などで、肝細胞に供給される脂質と代謝のバランスが破綻し、供給過剰になり、肝細胞に過剰な脂肪が沈着するのです。
そのため、NAFLDの性別・年齢別の有病率は、日本人における肥満人口をそのまま反映しています。男性では30~40代をピークに、その後、60歳までは40%前後と、ほぼ一定で高い有病率です。