大腸の「右側のがん」は発見されにくいので注意(shutterstock.com)
大腸がんの発生部位が「患者の生存率」に影響する可能性があることが、新たな報告で明らかになった。この報告を受けて、がんの専門家である米ノースウェル・ヘルスのDavid Bernstein氏は、「右と左、どちら側の大腸がんであるかが問題」と話す。しかも、「右側」の大腸がんが危険だという。
ジャン=リュック・ゴダールが監督しジェーン・バーキンが主演したヌーベルバーグの映画のタイトルではないが、まさに大腸がんも「右側に気をつけろ」である。では、それはどのような理由からか?
[an error occurred while processing this directive]近い将来、「大腸がん」ががんによる死因のトップに
日本でも戦後、食生活の欧米化とともに死亡率が著しく増加し、大腸がんが近い将来、がんによる死因のトップとなることが予想されている。
大腸は小腸からつながる管腔臓器で、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸と続く――。食物残渣が液状のまま流入する「盲腸」や「上行結盲腸」は、がん細胞は相当な大きさになっても症状が出ない。一方、「S状結腸」や「直腸」では、管腔も狭く、食物残渣は普通便の状態になっているため、血便や便通異常などの症状を契機に発見されることが多い。
大腸検査は、食道や胃の場合と同様、エックス線検査や内視鏡検査という画像診断が主流だ。しかし、大腸には常に便があり、食道や胃の検査のように、朝食を抜くだけでは検査ができない。また、検査をする側にも高度な技術が必要となる。
大腸検査ができる医者が少ないために考えられたのが、無症状の人たちから大腸がんの可能性の高い人を拾い上げていく「便潜血反応」という検査である。
治療法は、基本的には外科的手術になる。大腸がんは転移が遅く、わずかに粘膜下層に達した程度のがんであれば、最近では内視鏡によって治療される。また比較的大きな腫瘍でも、他への転移がないことがわかれば、腹腔鏡によって大きな開腹をしない治療が可能だ。
進行がんにより腸閉塞の状態になっている場合は根治が望めないが、腫瘍だけを切除することもある。抗がん剤による化学療法、放射線療法などを組み合わせることもある。
右側の大腸がんは左側よりも予後が悪い
話を冒頭のBernstein氏による報告に戻そう。
彼の話す大腸の「左側のがん」とは、比較的、肛門に近く、直腸、S状結腸、下行結腸に位置するがんである。このがんでは通常、出血や部分閉塞が見られるため、患者は早期に医療機関を受診するという。
一方、「右側のがん」は大腸の始まり、小腸との接合部に近い部分に位置する。一般的には閉塞は見られないが、貧血になる傾向があり、転移する可能性が高く、特に肝臓には転移しやすいとBernstein氏は説明する。進行してから発見されることが多いため、右側の大腸がんは左側よりも予後が悪い。
また、イタリアのASST Bergamo OvestのFausto Petrelli氏が率いる研究チームは、計140万人以上を対象とする66件の研究のデータをレビューした。追跡期間の中央値は5年強であった。
その結果は、先の研究と同様のものであった。左側に腫瘍のある大腸がん患者は、右側に腫瘍のある患者に比べて、死亡率が約20%低かった。「単に発見が遅れること以外にも原因があるようだ」とPetrelli氏らは指摘する。右側と左側の大腸がんの生存率の差は、診断時の病期という因子を除外してもなお認められた。
Petrelli氏らによる、先行研究で右側と左側の大腸がんは遺伝的にも別物であることが示されており、今回の新たな知見に基づき治療の強度を決定する際は、「原発腫瘍の位置を十分に考慮する必要がある」とのことだ。