電子タバコの「副流煙」は有害か無害か?(shutterstock.com)
ある調査報告を聞いて、ふと脳裡をかすめた疑問がある。「電子タバコについてはどうよ?」という素朴にして、その実あまり触れられていない「あれは有害か? 無害か?」の根本的な疑問だ。
厚生労働省の調査によると、家族や職場の同僚らに愛煙家がいる場合、受動喫煙が原因で死亡する非喫煙者の推計数は年間1万5000人にのぼるという。前回2010年の調査結果=年間6800人が、ほぼ倍増である。
[an error occurred while processing this directive]その理由は、従来の肺がんや心筋梗塞などに加え、脳卒中や乳幼児突然死症候群にも因果関係があるとして加算されたためだ。厚労省は2020年東京オリンピックに向けて、「受動喫煙対策」を強化する方針だという。
電熱線によって専用カートリッジ内の液体を霧状化し、その微粒子を紫煙の代替えとして嗜む電子タバコ(Vape)。ゆえに、吹かせば「喫煙(者)」であり、周囲は「副流煙」も浴びる。
前者の被害例(頭痛・めまい・咳・アレルギー反応・喉痛・胸痛・やけどetc)は欧米各国で報告されているものの、後者の健康被害に関する報告は寡聞にして知らない。
欧米主導で急成長してきた電子タバコ市場の規模は、2014年度で約35億ドル(約3500億円)、その約半分を米国が占めてきた(ユーロモニター調査)。
今後、市場は2017年までに約100億ドル(約1兆円)に達し、2047年までに既存のタバコ市場を凌駕するだろうと予測する向きもある。
「タバコ感」の被害はいまだ究明中
従来の製造タバコに比べ「微量」のニコチンしか含有しない電子タバコ。「第一世代」の登場期は、ニューヨークの専用バーが話題を呼んだり、当初は禁煙レストランでも利用できたのが条例で禁止扱いに転じたり、代替えによる禁煙成功例や節煙効果を謳う擁護報告もあった。
ところが、「一部の粗悪な製品には」という前提で、世界保健機関(WHO)やアメリカ食品医薬品局(FDA)が毒性物質含有の可能性を警告。米国疾病管理予防センター(CDC)も「ニコチン依存の増大」や「(若年層を)喫煙に向かわせるリスク」などの懸念を表明。
米国肺協会(ALA)もこれらの見解を支持するという、逆風の歴史が続いてきた。
現在の製品群は「第三世代」と呼ばれているが、わが国ではここへきてようやくという感じで普及が著しい。
しかし、昨年5月、厚労省が一部製品の蒸気から発がん性のある「ホルムアルデヒド」が認められたと公表。主にNHKの報道が飛び火して、「電子タバコ=有害性」という悪印象が、いまや巷間で伝播中だ。