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【連載「更年期をのりこえよう!」第19回】

更年期外来では実際どんなことをする? 治療には必ずゴールがある

更年期外来の診療とは?shutterstock.com

 最近では更年期外来と銘打って、更年期の不定愁訴を専門に扱う医療機関も増えてきた。それでは、更年期外来では実際にどのような診療が行なわれているのだろうか? ここでは私のクリニックを例にとってご紹介してみることにしよう。

①カウンセリング

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 患者の訴えの程度とその頻度、本人を取り巻く家族環境、人間関係、生活歴、既往歴や家族歴などを把握する。患者がどのような環境にあって不快症状を訴えているかを知ることは非常に重要である。更年期の不定愁訴のなかには、本人を取り巻く家族環境や人間関係を改善するだけで症状が消えてなくなることも少なくないからである。

 当院では必要に応じて、問診表を使って更年期指数をチェックすることもある。更年期指数のチェックは症状の重症度を知るためだけではなく、患者の不快症状がエストロゲン欠落症状によるものか、心因性の症状によるものかを見極めるために行なっている。心因性の症状が強く、心身症仮面うつ病の疑いがある場合には、心療内科の受診をお勧めしている。

 エストロゲン欠落症状が強いと判断した場合は、ホルモン補充療法(Hormone replacement therapy=HRT)の適応となるが、その際は、HRTの禁忌(実施してはいけない)症例が潜んでいないかを婦人科的、内科的にチェックしていく。HRTが禁忌なのは、重度の肝臓疾患をもつ方、乳がん、子宮体がん、血栓塞栓症などに罹患している方やその既往者、冠動脈疾患や脳卒中の既往者などである。これらの疾患の疑いがある方を除外するために、HRT実施前には必ず検査を行なう必要がある。

②血圧測定

 コントロール不能な高血圧はHRTの適応とならない場合があるため、血圧測定は必須である。患者が頭痛や動悸を訴えている場合には、高血圧が原因となっていないかを確認しておく必要がある。

③ホルモン検査

 卵巣から分泌されるエストロゲン(E2)や脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(FSH、LH)の値を測定する。これらは診断と治療の指標となるので、必ず最初に確認しておかなければならない。

 また、甲状腺ホルモン(TSH、T3、T4)も検査もしておく必要がある。甲状腺ホルモンは、更年期に女性ホルモンの乱れと連動して崩れることが多い。甲状腺機能亢進症でみられる発汗、ほてり、動悸や、甲状腺機能低下症でみられる全身倦怠感、むくみなどは、エストロゲン欠落症状と非常に似通っているため、鑑別しておく必要がある。

④血液検査

 コレステロール値(T-cho、 TG、 LDL)は、更年期に入ると急速に上昇するので、エストロゲン欠落症状のレベルを知る手がかりになる。また、動脈硬化などのリスクを知るためにも事前に把握しておく必要がある。

 重度の肝臓疾患がある場合にはHRTの禁忌となるため、肝機能(AST、 ALT)検査は必須である。

 コントロール不能な糖尿病もHRTの適応とならない場合があるため、血糖値(BS)の検査も必要である。

⑤婦人科健診(子宮がん、卵巣がん、乳がん)

 更年期は婦人科疾患の好発年齢であり、子宮体がんや乳がんの疑いのある場合にはHRTは禁忌となるため、事前にチェックしておく必要がある。

 子宮筋腫や子宮内膜症はHRTの禁忌ではないが、事前に超音波で大きさや部位を確認しておく。

⑥骨密度

 骨密度は、更年期以降の生活の質(QOL)を知るためにも測っておくとよい。

 HRTは骨粗鬆症の予防と治療に効果があり、現在、予防目的で保険の適応となる唯一の疾患である。症状が進行してから対応するより、早めに治療した方が効果的なのはいうまでもない。

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