映画『彼らが本気で編むときは、』で性同一性障害の役を演じることになった生田斗真さん
3月20日、GID(性同一性障害)学会が、東京都内で開催した総会で、初の「性同一性障害」認定医を9名決定したことを発表した。今後5年間で、50人程度の認定医を育成し、専門的な医療提供ができる機関を増やしていくという。
性別適合手術やホルモン療法など、性同一性障害の人が必要とする医療ケアは、現在はすべて保険適用外で、全額自己負担となっているが、GID学会は将来的には保険適用をめざし、各方面に働きかけていくそうだ。
[an error occurred while processing this directive]世の中に、さまざまな「性別違和」が存在する中で、性同一性障害についての統一見解はまだ確固としていない。もちろん、診断や治療のガイドライン(日本精神神経学会による)はあるが、臨床の現場で確定診断を下すのは、大変難しいし、慎重を期する。
さらに、適切な医療ケアを提供できる病院は、かなり限られている。一般社会においては、人々の偏見も伴い、医療者以上に理解や受け皿が進まないのが実情だ。
生田斗真が性同一性障害の役を
奇しくもGID学会の発表日に、来年公開の映画『彼らが本気で編むときは、』(監督・荻上直子)で、俳優・生田斗真さんが性同一性障害の役を演じることがわかった。
生田さん演じるリンコは、小さい頃から自分が女の子だと思っており、実生活の中でさまざまな葛藤はありつつ、家族の理解を得ながら成長し、のちに性別適合手術を受け、恋人の男性と同棲している設定だ。性同一性障害者の人生としては、理想的なストーリーだ。
性同一性障害の人の苦しみは、単に、性の不一致にとどまらない。家族や社会の無理解、パートナーとの問題、そしてカミングアウトできるコミュニティの少なさなど、彼らを取り巻く人間関係に大いに苦しめられる。
さらに、自分の生き方を選択するときに必要な医療ケアが、全額自己負担とあって、経済的負担にも苦しめられる。今回の、GID学会の決定は、一筋の光明といえるだろう。
性同一性障害者にとって切実なアイデンティティの問題
さて、性同一性障害の人にとって、医療的見地も大切だが、アイデンティティの問題は切実だ。LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)と、多様な性的マイノリティが存在する中で、「自分はいったい何者か?」という自己を確立する道のりは、筆舌に尽くしがたい。
性同一性障害は、多様な意味を持つトランスジェンダーとして括られることが多い。もちろん、トランスジェンダーとは結びつけないという異議もあるし、トランスセクシュアル(性別適合手術を実行または希望する人)の兼ね合いもあるし、気持ちの整理の付け方も相まって、本人自身も明解にしにくいものだ。
とくに日本は、男女の性差の概念がかなり固定化されていて、どちらにも属しがたいだけで、ちょっと浮いた存在になりがちだ。男か女かでなく、「自分は自分」という理念は、日本社会では通用しにくい。