アニマルセラピーは小児喘息にも有効(shutterstock.com)
犬や家畜がいる家庭で育つと小児喘息に罹りにくい、しかも、1歳までに犬や家畜と接触すると6歳までに小児喘息に罹るリスクが低下する――。
このような研究結果が、電子版『JAMA Pediatrics』誌の記事「Early Exposure to Dogs and Farm Animals and the Risk of Childhood Asthma」に掲載された。
[an error occurred while processing this directive]記事によれば、スウェーデンのウプサラ大学のトーヴェ・フォール教授らは、約100万人の小児を登録したコホート研究を実施。コホート研究とは、特定の地域や集団に属する人々を対象に、長期間にわたり病気と生活習慣や環境との関係を調査する研究だ。
フォール教授らは、スウェーデンで2001年1月1日から2010年12月31日までに出生した小児101万1051人を対象に、家庭で犬と接触がある小児と、親が牧場経営者または牧場就労者で家畜と接触がある小児を抽出した。
ロジスティック回帰モデルを用いて、学齢期コホート(27万6298人)に対しては、6歳時点で喘息と診断されたかどうかを、未就学期コホート(37万6638人)に対しては、1歳以降に喘息と診断されたかどうかをそれぞれ調べ、犬や家畜との接触状況と喘息罹患率との関連を分析した。
ロジスティック回帰モデルとは、同じ病気を持つ集団を追跡しながら、病気を発症させる危険因子(リスクファクター)を調べ、病気の罹患率を解析する分析手法だ。
小児喘息の被患率は25年前に比べ4〜5倍に増加
結果を見よう――。
まず、学齢期コホートのうち1万1585人(4.2%)が6歳時点で喘息に罹ったが、1歳までに犬や家畜と接触した小児は、喘息罹患率が有意に低かった。また、学齢期コホートのうち犬と接触があった2万2629人(8.2%)も、接触しなかった小児より6歳時点での喘息罹患率が有意に低かった。
一方、未就学期コホート37万6638人のうち犬と接触したのは5万3460人(14.2%)、家畜と接触したのは1729人(0.5%)だった。1歳までに喘息になった1万8799人(5.0%)を除外した35万7839人に対しの追跡調査したところ、2万8511人が喘息と診断されたが、喘息罹患率は1000人当たり3.1人に過ぎなかった。
つまり、犬や家畜との接触は、小児の喘息罹患率を低減させることがこれらのデータで裏づけられた。なお、生後1年間に、犬と接触した未就学期コホートは、肺炎と下気道感染症の罹患リスクがやや高かった。だが、家畜と接触した未就学期コホートは、その罹患リスクは低かった。
北欧諸国では、6~12歳児の4~9%が小児喘息だ。文部科学省の「2011年度学校保健統計調査」によれば、25年前(1986年)のデータと比較すると、小児喘息の被患率は、幼稚園児は0.7%から2.79%に、小学生は0.9%から4.34%に、中学生は0.7%から2.83%に、4〜5倍増加している。