便秘に悩む10歳代〜50歳代の女性は男性の3~6倍(shutterstock.com)
厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」によると、成人の便秘症の有訴者率(自覚症状がある人の割合)は男性4.0%、女性5.9%。便秘症の有病率は、成人の約14%に上る。実に日本人7〜8人に1人の高率だ。食生活の欧米化やストレスの増加などが主因といわれる。
10歳代〜50歳代までは、女性の有病率が男性より3~6倍も高い。妊娠中は、子宮の収縮を抑えるために女性ホルモンの分泌が進むので、妊産婦の便秘が増える。子宮や大腸は、緊張と収縮を司る不随意筋の平滑筋でできている。加齢とともに、腹筋力や腹圧の低下によって排便しにくくなり、大腸の蠕動運動の衰えによって便の運搬力が下がり、骨盤底筋の運動機能が低下するなどの要因が重なるため、高齢者の便秘症の有病率は高くなる。
[an error occurred while processing this directive]便秘は人に言いにくく、訴えない人が多い
尾高内科・胃腸クリニックの尾高健夫院長は、便秘症を訴えていない消化器内科外来の患者129人に便通のアンケートを行なったところ、23%(30人)が便秘症と答えた。30人のうちの10人は、処方箋なしで買えるOTC医薬品を使っていた。便秘は人に言いにくく、訴えない人が多いので、便秘症に悩む人はかなり多いはずだ。
そもそも便秘症とは何か?
胃腸の機能性疾患に関する世界的な診断基準の「ローマIII」によると、便秘症の3大症状は、排便回数の減少、排便困難感、残便感だ。急性と慢性に分けられ、慢性便秘症は、次の5つに分類されている。
機能性便秘(原因が特定できない便秘)、過敏性腸症候群の便秘(腹痛や腹部の不快感を伴う便秘)、薬剤性便秘(薬の副作用によって起きる便秘)、症候性便秘(糖尿病などの病気の症状によって起きる便秘)、器質性便秘(大腸の腫瘍などによって起きる便秘)。つまり、便秘症は、排便システムの障害だ。
排便システムをおさらいしよう。便は小腸から出てきたかゆ状の食物残渣から作られ、大腸で水分が吸収される。便が直腸に移動すると、直腸内圧が上昇し、直腸壁が伸びる。この刺激が骨盤神経を介して脊髄の排便中枢と大脳に伝わると、大脳は便意を感じる。大脳から出た排便の指令は、排便中枢、骨盤神経に伝わり、収縮していた肛門括約筋を緩めるため、いきみなどで腹圧がかかると、便が直腸から排出される。
慢性便秘症は、便が大腸の奥にたまるために大腸から肛門に達する時間がかかり、排便回数が週3回未満に減少する大腸通過遅延型と、直腸まで下りてきた便を感じ取れないために肛門付近に滞留する排出障害型に分けられる。大腸通過遅延型は、主に30歳代前半までの女性に多く、腹部の膨満感や腹痛などを伴う。一方、排出障害型は、主に高齢者に多く、排便困難、残便感、排便時の肛門・会陰部の不快感などを伴う。
原因が特定できない機能性便秘は、排出障害型が多いが、重症化すると大腸通過遅延型を合併する場合が少なくない。腹痛、腹部の不快感を示す過敏性腸症候群は、大腸のけいれんを伴うことから、便を徐々に移動させる蠕動運動が起きにくく、腸内で便が停滞しやすいのだ。