うつ病は長期ケアが必要な“慢性疾患” bee/PIXTA(ピクスタ)
日本は、抗精神病薬(主に統合失調症の治療に用いられる薬剤)の投薬が多すぎる、いわゆる“薬漬け”を国内外から指摘されてきた。
それに対して、やっと2013年、独立行政法人「国立精神・神経医療研究センター」が「抗精神病薬減量法ガイドライン」を発表した。同ガイドライン発表の背景には、さらに厚生労働省による医療費抑制の一環としての減薬指導の面もあったようだ。
[an error occurred while processing this directive]同センターは、多剤併用療法を受けている統合失調症患者163名を対象にした調査を実施。抗精神病薬を少量ずつ減らしたり休止したりしても、安定した状態の維持は可能だと発表。薬の種類や投与量を減らすためのツールの開発と普及もめざしている。
これらの取り組みによって、これまでに定着した「精神医療=薬漬け」の悪しきイメージは払拭されていくかもしれない。
うつ病患者の75%が2回以上再発
統合失調症と同じく、薬の多剤大量処方を問題視されているのが「うつ病」。2010年には、厚労省自殺・うつ病等対策プロジェクトチームが「過量服薬への取組」を公表し、その指針が提言された。
厚労省の調査によると、「気分障害(うつ病、躁うつ病、気分変調症など)」の総患者数は1996年には43万3000人だったが、2008年には104万1000人と2倍強に急増。現在ではさらにそれを上回る。
1990年代、「ストレス」という言葉が使われ、抗精神薬(精神に作用するすべての薬剤を指す)が周知されるようになった。「うつ病は心の風邪」「早期治療が有効」というテレビCMにも流れ始め、街には心療内科の看板も目立ち、精神科の敷居も低くなった。
だが現実には、うつ病は「寛解(症状が一時的に軽減状態にある、また治まった状態)」までに時間がかかることがある。米国の疫学調査では、うつ病を発症した人の少なくとも75%が2回以上の再発を繰り返したと報告されており、治療も長期にわたることが多くなる。