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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第15回】

自宅内が散乱、全裸で発見 司法解剖で不自然死の原因が危険ドラッグと判明

 法医学は犯罪捜査や裁判などで、法律を適用する際に必要とされる医学的内容を研究、応用する社会医学である。近年、薬物の乱用によって急死するケースが増加しているが、今年の日本中毒学会で、法医学が死因解明に大きな役割を果たした薬物中毒死、特に危険ドラッグによる剖検例を中心に報告する。 

 私たちが身近に法医学に接することはすくないが、TVドラマなどで犯罪の犠牲者や不審死体おいての司法解剖(剖検)される場面はよく目にする。剖検を行うことにより、犠牲者の死因を特定する多くの事実が認められ、調査した死者の血液、尿、臓器などによって詳細な情報が得られる。
 
 旭川医大法医学の清水恵子教授は、23歳の元来健康な役場職員の女性が、朝出勤にしてこなかったため、昼に同僚が自宅を訪ねたところ、ベッド上で死体となって発見された症例を司法解剖した報告を行った。

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自宅内には薬の空箱などは発見されなかった。若年の健康者であったため、その死因に不審を抱き、司法解剖が行われた。肉眼的には肺に水がたまった状態(肺水腫)以外に著変は認められなかった。しかし死体の血液を調査したところ、致死量のジフェンヒドラミン(乗り物酔い防止、嘔吐治療薬トラベルミンの成分)が検出された。死因は急性ジフェンヒドラミン中毒死と結論づけられた。

 後日の警察の捜査で、近隣の薬局2店舗から、トラベルミン100錠以上の購入履歴が確認されたが、薬の空き箱はついに発見されなかった。この症例は剖検を行わなければ、正確な死因は見逃されていたと思われた。清水教授は、死因となる外傷がなく、年齢が若く、特記すべき過去の病気がない場合には、薬物中毒死の可能性も念頭に入れて司法解剖を行う必要がある、と結んだ。

東京都内で発生した不自然死で危険ドラックの死亡例が増加

 司法解剖を行うことによって危険ドラッグ使用して死亡したこと明らかになったケースも最近増加している。東京大学法医学の槇野陽介先生は、30代男性で自宅内が散乱した状態で、全裸で発見された症例に対して司法解剖を行い、肉眼的所見では、特記すべき所見を認めなかったが、死体の血液、尿を検査したところ、α-PVP、3-Meo-PCPなどの危険ドラッグに混入する麻薬成分が検出された。死因は危険ドラッグの直接的影響による心停止、呼吸不全、さらに急性腎不全を発症したことが判明した。この症例は、死亡1カ月前に危険ドラッグ使用による異常行動での入院歴があったとのことであった。

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