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【特集「寝たきり老人」をつくる要因とは? 第4回】

「寝たきり老人」を量産している!? 医師や看護師......医療スタッフの"延命至上主義"

"延命至上主義"が「寝たきり老人」をつくる? coffmancmu/PIXTA(ピクスタ)

 ここに興味深い調査結果がある。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」(代表・樋口恵子)が2013年に行なった「人生最期の医療に関する調査」だ。調査対象は、全国の10代〜90代の5390人(女性4031人、男性1359人)。

 食べられなくなり、意思表示ができなくなり、治る見込みがなくなったとき、延命のため胃ろうからの栄養補給を望むかという質問に対し、85.4%の人が「してほしくない」を選んだ。同様に鼻チューブでの栄養補給を「してほしくない」が86.9%。こんなに多くの割合の人が、経管栄養をしてほしくないと望んでいる。

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 同じ質問を医療者に行った結果も出ている。胃ろうを「してほしくない」医師は85.1%、看護師は88.8%。鼻チューブを「してほしくない」医師は84.0%、看護師は94.1%だった。普段患者と接している看護師はその苦しさを見ているせいか若干高め。やはり医師も看護師も経管栄養を望まない人が大多数だ。

 なのに医療現場では、未だに意識のない高齢者に経管栄養が行なわれている。

「命を救うことが医療の使命」との思いが......

 その原因のひとつに、医療現場の「延命至上主義」を挙げるのは、医師で『欧米に寝たきり老人はいない 自分で決める人生最後の医療』(中央公論新社刊)の著者・宮本顕二さん、宮本礼子さん夫妻。

 礼子さんの勤める認知症病棟では、本人や家族が経管栄養や中心静脈栄養を希望しない場合、食べるだけ、飲めるだけで看取るようになったという。穏やかな最期を迎えられるそうだ。以前は1日500mlの点滴を行なっていたが、それで2〜3カ月延命できるものの、患者は極端にやせ細り、褥瘡(じょくそう=床ずれ)もできるなど、苦しむことがあったからだ。

 患者と接する看護師は「穏やかに看取るのも私たちの仕事と思えるようになった」と話す人が大多数だが、「栄養失調で死んだだけじゃないの」と言う看護師もいるという。介護士の中にも「(点滴など)できることはしたほうがよい」という意見もある。

 当たり前だが、これまで医学は一人でも多くの人の命を救うために発展してきた。昔なら命を落としたはずの病状の人が、現代医療の恩恵を受け死なずに済んだという例は数えきれないほどあるだろう。しかし、その延命至上主義が、寿命がつきかけている高齢者に対しても同様に発揮され、ひたすら「死なせない」ためにあの手この手を打っているのが今の状態ではないだろうか。

 医師、看護師、そしてほかの医療スタッフも、高齢者に対してスムーズに「治療」から「看取り」へとシフトすることができないのが多くの医療現場の現状だ。

医療者から出てくる「餓死」「見殺し」という言葉

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