インターネットを通じた「自殺の防波堤」が生まれてきている shutterstock.com
ネットと自殺問題──。今でこそ、ネットを利用した自殺予防の取り組みが注目されるように、ネットが自殺の防波堤に成りうるという可能性が取り上げられるようになっている。
だが、10年ほど前は、「ネットと自殺」といえば、「ネットが自殺願望を助長し、手段を与えもする」というように、極めてネガティブな文脈で関連づけられることのほうが多かった。その原因となったのが、「ネット心中」や、ネットを通じて手段が広まった硫化水素自殺といった問題である。
[an error occurred while processing this directive]1998年には、ネット上の掲示板で「ドクター・キリコ」を名乗る人物が、自殺志願者に青酸カリのカプセルを送付し、それを服用した女性が死亡する「ドクター・キリコ」事件が起こる。
2003年から04年にかけては、ネット上の自殺掲示板で知り合った見ず知らずの人物が一緒に自殺する「ネット心中」が連鎖的に起こった。
2008年には、ネット上で硫化水素ガスを発生させて自殺する方法が広まり、実に1056人の硫化水素自殺者が発生した。
自殺総合対策大綱に盛り込まれた条項
2007年に策定された自殺総合対策大綱に、インターネットに関する記述が盛り込まれているのは、このような事件を受けてのものだ。この大綱は2012年に新しくなっているが、その中には、次のような条項が盛り込まれている。
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インターネット上の自殺予告事案に対する迅速・適切な対応を継続して実施する。また、インターネットにおける自殺予告サイトや電子掲示板への特定個人を誹謗中傷する書き込み等の違法・有害情報について、フィルタリングソフトの普及・プロバイダにおける自主的措置への支援、相談者への対処方法の教示等を実施する。
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このように、インターネットという手段によって自殺が喚起されるケースを防ぐために、対策が行なわれてきた経緯がある。
しかし最近は、インターネットのマイナス面だけを捉えるのではなく、インターネットという手段を通じて自殺を防ぐ試みが、さまざまなところで生まれてきている。インターネットを通じた自殺予防に取り組むNPO団体「OVA」の活動はその代表だし、最近はグーグル(Google)で「死にたい」と検索すると、相談用の電話番号が表示されるようになった(2015年7月22日現在)。