あなたは安楽死を選択したいですか?shutterstock.com
スイスでは、安楽死が認められている。このため、世界中から、安楽死をもとめる難病患者や末期ガン、心臓疾患の患者たちがツアーでやってきては自殺している。スイス・チューリヒの法医学研究所はその実態調査から、安楽死する目的でスイスを訪れた「自殺旅行者」が、2008~2012年の5年間で611人に上ると昨年発表した。年度別に見ていくと2008年の123人から2012年には約1.4倍の172人へと急増している。
不治の病で末期かつ耐え難い苦痛を伴う場合などで安楽死を希望する場合、自殺幇助機関に登録すれば苦しまずに自死することができるのだ。自殺幇助機関のひとつ「エグジット」はスイス在住者だけが登録可能で、かかる費用は年会費の約3千円。もうひとつの機関「ディグニタス」は外国人も登録することができ、入会金と諸費用を合わせて安楽死には約70万円が必要だ。この値段は果たして高いのか安いのか?
[an error occurred while processing this directive]安楽死はスイスの他に、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、アメリカの4州(ワシントン、オレゴン、モンタナ、バーモント)で合法となっているが、外国人向けに安楽死を受け入れているのは「ディグニタス」だけだ。
「ディグニタス」によると、安楽死を幇助するためには、会員の医療記録を徹底的に分析し、生きつづけていくのが困難だと判断された場合のみ、致死薬が処方される。うつ病などの精神疾患は安楽死の対象外となるという。さらに致死薬の処方が可能と判断された患者の8割は、安楽死が可能だとわかった時点で、自殺願望が弱まるという。また、適切に幇助をすることで自殺未遂の後遺症を防ぐという利点がある、としている。
しかし、幇助をするという判断自体が誰のどんな基準で行われるのかが大きな問題だ。あるいは難病患者や老人などが、介護に辟易している家族や周りの人々に圧力をかけられた結果、あるいは本人が迷惑をかけまいとして、安楽死を選択してしまう危険性もある。もちろん本人とカウンセラーが徹底的に話し合い、安楽死は本人の希望であると確認をとるようになっているというが、その実態は不明だ。
賛否両論の中で安楽死を選んだブリタニー
こうした動きにはもちろん賛否両論がある。
まず安楽死について考えていくとき、国ごとに医療政策が異なっているため、死をとりまく環境が違っていることもポイントとなる。自殺することを奨励するような医療政策をとっている国家は、難病や死に至る病を患った人達に対する、物心両面のケアが不足しているのではないかと懐疑する必要があるかもしれない。
一方、死を恐れる感情は「自然」であるから、不可侵の感情だ。自分の死に様は、自分で決めることができる、という「死の自己決定権」を唱える人もいる。確かに世界には多様性が必要だ。死に方にも多様性がある、それでも「私の安楽死はあなたには関係が無いからほっておいてほしい」「ただ安楽に、安楽に死にたいという自然な感情だ」、とする主張にはある種のアンバランスを感じる。
昨年はアメリカで悪性の脳腫瘍が見つかり、余命半年と宣告を受けたブリタニー・メイナードさんは、自ら命を絶つことを選択した自分をYoutubeで公開して世界に衝撃を与えた。そして、その選択のどおり11月1日に安楽死で息を引き取った。彼女は生前、CBSテレビのインタビューで、「私は死にたくないのです。もし誰かが魔法の治療法で私の命を救ってくれるなら、私はそれを選びます。そうすれば、私は、夫と子供をもつことができるのです」と答えている。さらには「堪えがたい現実を経験したことのない人が自分の決断を批判することは不当だ」としている。