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スリム体型でサラサラ血液でもボロボロ血管が死を招く?

"血潮"は時速200km以上!

 日本人の3大死因は「がん」「脳血管疾患」「心疾患」だ。このうちの2つ疾患の原因となるのが動脈硬化、つまり血管の硬化である。脳血管疾患と心疾患は、メタボ体型でなく第一線で活躍している元気な人でも急に発症することは少なくない。

 有名人では、2013年に女優の天海祐希さんが舞台の終演後、「体がダルい」と訴えて心筋梗塞で入院。歌手の西城秀樹さんは2003年に脳梗塞を発症。見事に復帰したが2011年に再び脳梗塞に倒れた。2014年にはタレントの磯野貴理子さんが脳梗塞で倒れ、緊急入院した。

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 いずれも、スリムな体型で自覚症状のなかった健康だと思われた人たち。そんな人でも脳梗塞や心筋梗塞が起こり得るということで、社会に警鐘を鳴らしたといえる。

 原因となる動脈硬化を防いでリスクは下げるには、まず自分の動脈硬化度を知る必要があるだろう。年齢を重ねると肌や脳と同じく血管も老化する。一時期、血液 "サラサラ"が注目され、「生タマネギのスライスを毎日食べる」という健康法も流行した。しかし、いくら血液がサラサラでも、それが流れる血管が"ボロボロ"では危ない。

時速200km以上の血流が血管に負荷を

 血流の拡大映像で、赤血球や白血球がゆっくりと血管内を流れる姿が写し出されているのを見た覚えはないだろうか。しかし、実際は動脈だと時速200km以上になる。

 私たちが生を受けてから死ぬまで、血管はこれだけ高速の血液が流れ常に圧力と刺激を受け続けている。加えて日々の飲酒や喫煙、ストレスなどのリスク因子によって血管はさらにダメージを受ける。

 血管は外膜・中膜・内膜3層構造になっている。弾性をもつ内膜は、ゴムホースに例えられる。若い頃はしなやかで、高速の血流にさらされても動じずに、血球に酸素を乗せて末梢まで運び、二酸化炭素を肺に届ける仕事をこなす。

 やがて老化とともに血管の弾力がなくなり、内膜自体も痛み、剥がれて傷ついてくる。そこにコレステロールなどが集まり、内膜の中にマクロファージが入りこんで膨らんでくる。その膨らみが大きくなると、血管が閉塞したり(脳梗塞、心筋梗塞)、破れて出血(脳出血・くも膜下出血)したりする。

PWV検査があなたの動脈年齢を示す

 こうした動脈の硬化度を定量的に測る手法はないものか。長年研究が続けられた結果、流体力学の理論を用いた測定が考案された。同じ速度で液体を流せば、硬い管ほど早く目的地に到達する。管に弾性があると、液体は内壁にぶつかり進むので遅い。

 この「脈波」を元に年齢差で血流の一定基準を作成。これで被験者の血管年齢が推測できるようになった。これが「PWV(Pulse Wave Velocity)検査」というもので、日本語では「脈波伝播速度検査」と呼ばれている。

 PWV検査は体に負担がなく方法はいたって簡単だ。手首足首と心臓の位置にカフと呼ばれるセンサーをつけ、10分以内で測定は終了。同時に「ABI(Ankle brachial index)」検査も行うことが可能だ。こちらは上肢と下肢の血圧の比を測り、比較的太い血管の狭窄をチェックする。

 PWV検査は、現在増加している糖尿病の「閉塞性動脈硬化症(ASO)」の検査にも用いられる。動脈硬化は多くの合併症を誘発させ、発症するとその予後に大きな影響を与える。死に直結するようなリスクだ。将来の狭心症や、心筋梗塞、脳卒中などを避けるには、まず血管の弾力性の測定が有効だ。その上で、具体的な生活習慣の改善などに取り組むことが大切だといえる。
(文=編集部)

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