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【インタビュー 「介護離職」を食い止める! 第4回 NPO法人 介護者サポートネットワークセンター アラジン理事長  牧野史子】

介護にどっぷりのめり込む前に......。介護休暇の上手な使い方

ケアラーズカフェでは「花のレッスン」なども行い、介護者のストレス解消にもひと役買っている。"

 いまビジネスの世界で問題になりつつある「介護による離職」。これを食い止めるにはどうしたらよいのか? 

 介護者の支援事業を行うNPO法人「介護者サポートネットワークセンター アラジン」の牧野史子理事長に話を聞く。

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 介護による離職は、会社にとっても社会にとっても大きな損失である。そのため、平成22年6月に「育児・介護休業法」が施行され、大企業から中小企業まで、多くの会社が介護休業制度や介護休暇制度、時間短縮制度などを導入している。特に従業員数500人以上の大企業の介護休業制度導入率は99.9パーセントにもなる(平成24年)。

 しかし、実際に制度を利用した人がいた会社はわずか1.4%にとどまっており、まだまだ制度を有効に使えていないのが実情だ。とはいえ、今後は親や配偶者の介護に携わる人が増える一方と予測されるので、「介護休業制度取得率」は企業にとって自らをアピールする格好の材料と言えよう。

 子どもの1歳の誕生日までと、期間が限定される育児休業と違って、介護には終わりが見えないからやっかいだ。通算93日ある介護休業だが、いつ取得すべきなのか。分割して取得することができるものの、使い切ってから親の認知症が進んだら......などと考えるとタイミングが難しい。

 牧野理事長は、介護を始めるときの態勢づくり、環境づくりに活用するのがいいと、うまくいった例を挙げてくれた。

介護休暇はマネジメントに使う

 

「東京で働いている女性の例ですが、地方に住む母親が倒れたというのです。父親がメインで介護することになるものの、父一人にはとても任せられないと介護休暇を取って実家に帰りました。そして、まずは何が必要かを必死で勉強した。その後きちんとケアマネジャーと話し合って、自分の希望を入れたケアプランを作り、福祉車両も購入。母親の介護にかかわる人材も増やすなど一通りのことをマネジメントしてから東京に戻り、いまは迷いなく仕事に復帰しています」

 このように態勢を整えるためなら、介護休暇の取得は1カ月程度で十分ではないだろうか。そして残りの60日あまりは、不測の事態や介護度が進んだときのために取っておく。この例では、父親やケアマネ、訪問ヘルパーなどと密に連絡を取り合っていれば、安心して仕事に打ち込めることはもちろん、離れていても介護に参加している実感が得られる。

 なお、遠距離介護の場合は各航空会社の「介護割引」、JRなら新幹線回数券、会員制のインターネット予約などを使うと交通費が節約できる。体力があるなら、もっとコストの低い高速バスを利用するのも手だ。

ほどほど介護が両立させるコツ

 

 一方、介護によって仕事を手放してしまいがちなのは、「責任感が強いタイプ」だという。介護と仕事、どちらも全力で行わなくては納得できず、結局両立は無理と結論づけてしまうのだ。こういうタイプは、介護休暇を取るのも同僚に申し訳が立たないように感じてしまう。

 牧野理事長も「自分がやらなきゃ、と介護にどっぷりのめり込んでしまう人ほど、仕事を手放してしまう危険性があります」と話す。

 たとえ他に頼るべき家族のいない介護であっても、自分一人ですべてを抱え込むことはない。ケアラーズカフェや家族会などで話を聞いてもらうと同時に生きた情報を集め、少しでも負担が軽くなるよう介護に生かすべきだ。

 介護とは、実際に着替えや食事、排泄の介助など生活のすべてに自分の手を貸すことをいうのではない。ケアマネジャーに相談し、介護保険サービスを最大限活用して自分の仕事の都合も反映したケアプランを作る......こうしてヘルパー、訪問入浴、訪問看護など、さまざまな人の協力を得ながら自分は介護のキーマンとなることも重要である。

 長丁場になるかもしれない介護だからこそ、ある程度は人の手に委ねて介護される人の情報を共有し、何かあったらその都度対応することが仕事を続けながら介護を行うコツといえるだろう。


NPO法人 介護者サポートネットワークセンター アラジン
*アラジン「心のオアシス」(電話相談)専用ダイアル/03-5368-0747(毎週木曜 午前10:30~午後3:00)

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