糖尿病治療薬に意外な効果!?
相変わらず人気のGLP-1薬。最近、うつ病への効果も話題になっています。
肥満とうつ病は双方向の関係
米国疾病予防管理センター(CDC)(1)によると、うつ病を患う20歳以上の米成人の43%が肥満も患っています。また英国エクセター大学の研究者らが、うつ病患者4万8000人を、29万人を超える対照群と比較したところ、BMI が高いほどうつ病のリスクが高まりました。リスクは男性(8%)よりも女性(21%)で増加しました(2)。
一方、C D Cによると、米成人のほぼ11%が抗うつ薬を服用しています(1)が、多くの抗うつ薬の副作用に体重増加が知られています。2019年のレビュー(3)では、抗精神病薬で体重が7%以上増加し、特定の抗うつ薬では体重が5%増えました。原因は明らかではありませんが、薬が食欲を増進させ、代謝を低下させる可能性があることが指摘されています。
[an error occurred while processing this directive]さらに、いったんうつ病の症状が現れると、運動が難しくなり、肥満が悪化する可能性があります。うつ病が肥満を引き起こすのか、それとも肥満がうつ病を引き起こすのか・・・。鶏が先か、卵が先かという問題のようです。
そのような中、米国最大の電子医療記録会社の 1 つである Epic の調査部門「Epic Research」 の報告(4)で、GLP-1薬による減量で、うつ病や不安症の診断のリスクが減ることが示されました。
GLP-1薬はうつ病の治療薬になる!?
この調査では、300万人以上の糖尿病患者と100万人近くの非糖尿病患者で、オゼンピックおよびウゴービ(一般名セマグルチド)、マンジャロおよびゼップバウンド(一般名チルゼパチド)などの有名ブランドに代表されるGLP-1薬を利用している患者を分析しました。
すると、セマグルチドを利用した糖尿病患者は、うつ病と診断される可能性が45%低く、不安症と診断される可能性が44%低いことがわかりました。一方、チルゼパチドを利用している糖尿病患者は、うつ病と診断される可能性が65%低く、不安症と診断される可能性が60%低いことがわかりました。
またニューヨークタイムズ(NYT)によると、米国では、「一部の精神科医は、多くの抗精神病薬や、うつ病や不安症の治療に使用される一部の薬に見られる体重増加に対処するために、オゼンピックの処方を開始」しています(5)。
NYTは、米国の主要な医療システムの13の主要な精神医療施設と精神科から話を聞きました。そのうち6施設は、すでにオゼンピックのような薬を患者に勧め、処方していると答えました。7施設は、安全性や副作用への懸念を理由に、また減量薬の処方は自分たちの範囲外であるとの考えを示し、処方はしないと答えました。
専門家らは、「重度の精神疾患をもつ人々が、これらの薬でどのような状態になるかがほとんど分かっていない中で、おそらく無期限に服用することになる薬を処方するのはどうか」「うつ病、双極性障害、その他の精神疾患をもつ人々がセマグルチドを服用しているというデータはほとんどない」「体重を増やしたくないという理由で、精神科の薬の服用をやめたり、服用をまったく拒否したりする人は多い」など、処方の是非についての議論を交わしています。
ところで、否定的なボディイメージは、羞恥心や不幸感を引き起こし、うつ病や不安症のリスクを高めます。そこで身体を受け入れることに関して、「ボディ・ポジティブ」、「ボディ・ニュートラル」という2つの考え方が支持されています。ただしGLP-1薬の登場で、「ボディ・ポジティブ」への批判が始まりました。