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オリンピックのしわ寄せで起きているコロナワクチンの供給不足!? 何が一番大切なものなのか?

ワクチン供給をコントロールできない官僚と政治家

 コロナワクチンの供給に関して、段々雲行きが怪しくなってきた。どうもいよいよ医療機関に供給される予定のワクチンが足りないようなのだ。

 東京都の医療機関では2週間ごとに次の2週間に必要なワクチン量を自治体に請求するのだが、われわれ練馬区の近隣区ではとうとう請求通りのバイアルが配給されず、来月(7月請求分)からの供給量が請求分の2割減になるとの通達が来たらしい。練馬区ではまだそのような話にはなっていないが、早晩やはり請求通りの量が入らなくなる可能性が高くなってきた。

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 これまでは「請求すればその分が必ず供給されること」を前提として予約を入れてきたので、当院では1日に接種できる人数(1バイアルで接種する6の倍数)だけを決めて、需要があるところまで予約を取り続けた。その結果、高齢者の1回目の接種分として7月の中旬までの予約が埋まり、そのあたりからピタッと予約の足が止まった(おそらく当院で接種するほとんどの高齢者の予約が済んだのだろう)。「7月いっぱいまでに高齢者の2回のワクチン接種を終える」という政府の立てた目標には届かないものの何とか8月中には接種が終えられる見通しが立った。ちょうどそのころになって、次の優先順位のグループ(64歳以下他)に接種券が郵送され始め、引き続き次のグループの予約が始まった矢先のことだった。

「請求した分が全量供給されるわけではない」ということになったら、どういうことが起きるか想像していただきたい。繰り返すが当院の予約はすでに8月にまで続く毎日すべてが埋まっているのだ。2割供給減ということは、当たり前の話だが、予約している人の2割の人に接種するワクチンがないことになる。連日の2割の人の予約をキャンセルするにしてもキャンセルする人をどうやって選ぶのか、そしてその人たちの接種はいつ行うのか(8月まですでに予約が埋まっている)。予約日程の最後に新たに予約を入れ直してもその日に間違いなくワクチンが供給される保証もなくなったということだ。7月に入ってすぐにそのような状況に陥ったら、1回目の接種すらできない高齢者が次々と生まれてくることを意味する。四苦八苦してやっと接種システムが安定してきたのに、突如として根底から覆されることになる。こうなることが始めからわかっていたら事前に打つ手もあったが、今突然そのような状況の中に放り出されてもなすすべがない。

医療従事者等へのワクチン供給を打ち切り!

 信じられない話だが、東京都では高齢者よりも優先順位の高い医療従事者等へのワクチン接種もまだ完了していないらしい。そんな中、東京都保健福祉局から「新型コロナウイルスワクチンに係る医療従事者等への優先接種体制の終了に向けた対応について」という通達が回って来た。「配送委託終了日(予定)令和3年7月23日(金曜日)」を持って医療従事者等へのワクチン供給を打ち切るという知らせなのだ。驚いたのはなぜこの時期にこのような通達を出さねばならなかったかその理由だ。通達文章の中では以下のように説明されていた。

『今後、東京2020大会の開催を控え、ワクチン配送に必要な車両及び人手等の輸送力確保が困難となる状況の発生が見込まれることから、「配送希望があるにもかかわらず対応ができない」といた事態の発生を万が一にも未然に防止するため、今後の配送予定量の規模を事前に把握することを目的として、次による調査を実施します。』

 オリパラとの関連でいうと、東京五輪の全ボランティア7万人対象のワクチン接種に向けて、ファイザー社からのワクチン無料提供に加えて、「東京都の協力によりモデルナ社製のワクチンおよび接種会場の確保ができた」という報道があった。つまり、東京都にはモデルナ社製のワクチンを提供する余力があることが明らかになった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f9d511a124af35a694abcb0b394b2213c8bcb24d

 医療現場からはファイザー社製が足りないならばモデルナ社製を医療機関に供給してほしいとの要望が上がったが、厚労省は「混乱」が起きうるとしてモデルナ社製の提供を拒んでいる。
*投降後付記:今度はモデルナ製ワクチンが不足し始めて、自治体の大規模接種にファイザー製を供給するとの報道あり( https://news.yahoo.co.jp/articles/0a4cf44856dbc03349466aa397e193af2c86c7e0 )

さらには、医療機関向けのワクチンが不足しているのは東京都だけの問題ではないようだ。京都市・大阪市でも国からのワクチン供給不足で接種予約がほとんどできなかったり、すでに予約した分のキャンセルを余儀なくされているとの報道があり、もはや一部の市町村に起きている問題ではなくなっている。
(京都市 国からのワクチン供給不足で接種予約がほとんどできない状態に…「接種の加速難しい」)
https://news.yahoo.co.jp/articles/caabc226bfa56993c060e9e9476574b0837532d0
(【独自】大阪市が「ワクチン供給量を減らす」通知 医師からは憤りの声)
https://news.yahoo.co.jp/articles/93e72339f2f73c7f5c140c4945383b3e463b3bde

 国はVRS(接種記録システム)への入力が滞っているとまだ接種していないワクチンが備蓄されているとみなして供給量を減らされると説明しているが、ワクチンが十分にあるならばそのような対応を取る必要もないわけで、ワクチンが足りないという根本にある問題の論点のすり替えでしかない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/55d306ec25b0b8bdb8555b05f3f825b3f64d8a0a?page=1

 オリンピック・パラリンピックの開催の良し悪しについて言及する立場にはないが、オリンピック・パラリンピックを開催することのしわ寄せでコロナ感染ハイリスクの高齢者のワクチン接種が滞るようなことは絶対にあってはならない。それが足りないというなら、今すぐほかの優先順位用にばらまかれているワクチンを至急回収して補填する緊急対応が必要だ。
(文=和田眞紀夫)

和田眞紀夫(わだ・まきお)
わだ内科クリニック院長
※医療バナンス学会発行「MRIC」2021年7月6日より転載(http://medg.jp/mt/)

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