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【シリーズ「AIと医療イノベーション」第26回】

AI診断プログラムを米国食品医薬品局が初承認! 眼底カメラの画像から糖尿病性網膜症を診断

糖尿病網膜症は高血糖が網膜内の血管を傷つけ視力の喪失を引き起こす糖尿病の合併症(depositphotos.com)

 AI(人工知能)がソフトウエアのイノベーションを、また一歩進化させる出来事が起きている。

 4月11日、米国食品医薬品局(FDA)は「AI診断プログラム」を初めて承認した。このプログラムは、眼底カメラで撮影した画像を解析し、糖尿病性網膜症の発症を判断する診断装置「IDx-DR」だ。

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 今年2月、FDAは、IDx-DRをBreakthrough Device(画期的医療機器)に指定し、優先的に審査を進めてきた。FDAが「IDx-DR」を開発したアイディーエックス(IDx)社の販売権を初認可したのは、実に画期的な「事件」と論議を呼んでいる。

 糖尿病網膜症は、高血糖が網膜内の血管を傷つけ、視力の喪失を引き起こす糖尿病の合併症だ。眼科医以外では発見されにくく、内科医が眼科の受診を勧めても受診せずに悪化するケースが少なくない。米国の3000万人に影響があるとされる。

FDAが認可した初のケース

 このプログラムは、トプコンが販売する無散瞳眼底カメラ「NW400」で撮影した画像をAIアルゴリズムが分析し、医師が画像をクラウド・サーバーに左右2枚ずつアップロードするだけで、陽性か陰性かを1分以内に迅速に判定できるシステムだ。

 対象は糖尿病性網膜症と診断されていない22歳以上の軽度糖尿病性網膜症患者。レーザー治療や眼の外科手術や注射を行っている患者や妊娠中の患者は対象外だ。2017年に糖尿病患者900人を対象にした治験では、感度(陽性率)87%、特異度(陰性率)90%の高精度が確認されている。

 FDAは、AIを使用したデジタルヘルス製品をすでに認可しているが、今回のプログラムは、医師が画像や結果を解釈しなくても検査結果を出すことをFDAが認可した初のケースとなった。

 FDAのスコット・ゴットリーブ局長は「 FDAはイノベーションを日々促進しつつ、AIに基づく医療機器の使用をアシストし、医療改革に努めている」と強調している。

 ちなみに、2010年に設立されたベンチャーのIDx社は、眼底撮影や光干渉断層撮影(OCT)の画像に基づいた疾患を検出するアルゴリズムを開発し、米IBM社などと販売提携を結んでいる。現在、糖尿病性網膜症の診断プログラムの他、緑内障、加齢黄斑変性、アルツハイマー病、心血管病、脳卒中のリスクを検出するソフトウエアの開発にも取り組んでいる。

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