交通事故にもつながる「眠気の正体」が判明(depositphotos.com)
今年5月21日、都内で軽ワゴン車を運転中に「睡眠障害の影響」から居眠り状態となり、路上で作業中の男性に6か月のケガを負わせた運送業者(60)が、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の疑いで逮捕された。
睡眠障害による事故(前掲容疑)での逮捕が全国初だったため、耳目を集めたが、もっと驚いたのが同容疑者の事故歴だ。平成26年以降、19件もの交通事故を起こしており、うち7件が人身事故で免停が3回――。
[an error occurred while processing this directive]容疑者自身も過去に2回「睡眠障害」の症状を訴えて病院を受診したものの、通院はしないまま放置していたという。
折しも、というか皮肉にも、6月1日から国土交通省は、バス、トラック、タクシー業界の乗務前点呼に「睡眠不足」のチェックを追加した。
運行管理者側からすれば、従来の体調確認(疾病/疲労)に1項目が増やされた次第だが、同省の石井啓一大臣は「(事故防止に加えて)働き改革を進める観点からも重要」と言及している。
しかし、いわゆる意識向上を促す以上の施策は、現時点で検討もされていない後手後手ぶりだ。国交省による追加策の背景には、当然、近年相次ぐ「睡眠不足が原因」と思しきバスやトラック運転手の重大事故問題がある。
だが、その底流には「人手不足」という未解決問題があり、いずれの業界も、人材確保や勤務間インターバル制度の導入が立ち遅れているのは明らかだ。
女性が要注意の関連疾病は
一方、医学界では、このところ「睡眠障害」や「眠気の正体」に関する研究報告が続いている。
たとえば、京都大学医学研究科が滋賀県長浜市との共同事業(ながはまコホート)において実施した世界最大規模調査の解明成果も、その一つだろう。
「性差」と「閉経前後」の例も踏まえ、総計7000人以上を横断的に調べた話題の研究テーマは、「睡眠呼吸障害/短時間睡眠/肥満の相互関連性と、それらが高血圧/糖尿病に与える影響を探る」というもの。
冒頭の交通事故例が物語るとおり、日中の「過度の眠気」は社会生活に重大な影響を及ぼす可能性を秘めている。また、今日の24時間社会において「睡眠不足」は誰もが抱える日々の悩みであり、生活習慣病との関連も注目されつつある問題だ。
この短時間睡眠の究明に関しては、従来ありがちな「自己申告制」を排し、睡眠日誌&加速度計の測定を用いた客観的データに基づいて行なわれたという。この世界最大規模の調査結果から、今回の記事に触れる要点を拾えばこうだ。
●睡眠時無呼吸については、その最重要要因とされる「肥満」のみならず「客観的な短時間睡眠」とも関連していることが判明した。
●睡眠呼吸障害については、男女とも「高血圧」との関連が認められ、その度合いは重症度に比例して高くなる。
●睡眠障害と糖尿病との関連については、「女性のみ」に認められ、とりわけ閉経前の女性の場合は「中等症以上の睡眠呼吸障害」があると糖尿病が28倍も多かった。