「ノビレチン」が睡眠障害や夜間頻尿に効く(depositphotos.com)
生物の体に備わる「体内時計」は、約24時間周期で自転し、昼夜の交代がある地球のリズムに適応して生きるための仕組みだ。
現代人は、生活習慣やストレスの影響で、体内時計が狂いやすい。シークヮーサーなどの柑橘類に含まれるフラボノイド「ノビレチン」は、体内時計の働きを保つのに有用との研究が発表され、注目されている。
[an error occurred while processing this directive]時計遺伝子のメリハリをつける
ノビレチンの体内時計に関する効果については、早稲田大学の柴田重信教授(先進理工学部)らが研究論文を発表している。ノビレチンは時計遺伝子の一つ「Per2」の働きにメリハリをつける作用があるという。以下に詳しく見ていこう。
体内時計の働きは「時計遺伝子」と呼ばれる遺伝子が担っている。「Clock」「Bmal1」「Per」「Cry」といった時計遺伝子が一定の周期で規則的にタンパク質を産生し、約24時間周期の概日リズムが作られるのだ。
主体となるのはClockとBmal1。日中にかけて増えるタンパク質と、夜間にかけて増えるタンパク質を産生し、昼夜交代の大きな波をつくる。波が大きすぎてもうまくリズムにならないので、PerやCryなど他の時計遺伝子が産生するタンパク質が関わり、リズムを調整している。
しかし、何らかの要因によって時計遺伝子の1日の変動幅が小さくなると、体内時計の働きが弱まってしまう。例えば、高齢になると、朝早くに目が覚め、日中や夕方に眠くなる人が増える。こうした変化も、時計遺伝子の増幅が弱まったり、周期がズレてしまったりするためだ。
しかし柴田教授によれば、ノビレチンの摂取によってPer2の変動幅が増えると、リズムのメリハリがつき、体内時計の乱れを改善する作用が期待できるという。
さらに、ノビレチンに体内時計の周期を延長する(後ろにずらす)作用も認められている。周期の延長は、高齢者に多いとされる睡眠相前進症候群(体内時計の進みが早く、夕方に寝てしまい、社会適応できない睡眠障害)の治療に応用できる可能性がある。
柴田教授はさまざまなフラボノイドについて検討した結果、ノビレチンには特に体内時計の調節や周期延長作用が強く見られたと報告している。