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聴力が事故に遭うリスクを下げる!? 音楽フェス好きは耳の休息日を……

聴覚に「わずかに問題あり」でも事故に遭うリスクが1.5倍も高まる(depositphotos.com)

 「難聴」と聞いて、あなたが連想する不自由さとはどんなことだろうか?

 好きな音楽を満喫しづらくなる。他人との会話に多少なりとも支障が生じるだろう。TVドラマのセリフだって聞き逃すかもしれない。名前を呼ばれても気づかない場面が増えるかも……。

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 大方の解答はそんなものかと想われるが、いずれも「難聴=聴き取りづらさ」と捉えている点では似たり寄ったりともいえるだろう。

 しかし、耳鼻咽喉科/頭頚部外科の専門誌である『JAMA Otolaryngology-Head & Neck Sugery』(3月22日オンライン版)に掲載された最新知見が、難聴が引き起こす意外な顛末(盲点)を示唆しているので紹介してみたい。

「事故による負傷リスク」は1.5倍以上

 米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院耳鼻咽喉科のNeil Bhattacharyya氏らが実施した研究成果の報告書に曰く――ヒトは難聴があると、事故で負傷するリスクが高まる可能性が拭えない。

 加齢に伴う難聴は、とかく「仕方がない自然なこと」「誰しも避けがたい事象」と思われがちだ。将来の生活面での支障は予測しつつも、さほど大きな問題とは考えていないという人のほうが大勢だろう。

 しかし、Bhattacharyya氏らは、専門医の立場から「聴覚は周囲の危険を察知する上で重要な役割を果たしている。ゆえに聴力の低下が事故による負傷リスクを高めるのではなかろうか」と考えた。それが今回の研究を実施した背景だと語っている。

 研究対象は18歳以上の男女で、その数は2億3200人分ものデータに基づいて行なわれた。いずれも、2007年~2015年の米国民健康聞き取り調査(National Health Interview Survey:NHIS)において、「聴力と直近3カ月以内の事故による負傷に関する質問」の項目に回答した人々だ。

 NHISでは上記の質問に際し、聴力の状態を次の6段階、「①極めて良好」「②良好」「③わずかに問題あり」「④中等度の問題あり」「⑤重大な問題あり」「⑥聞こえない」に分けて自己評価してもらい、回答を求めた。

 集計の結果、全対象者のうち2.8%(660万人)の人々が「事故で負傷した経験」を持っていた。そして、こうした負傷経験者中6人に1人が「良好」に満たないレベルに聴力が低下している傾向も読み取れた。

 詳細な解析によると、「①極めて良好」や「②良好」の人に比べ、「③わずかに問題あり」の場合で「事故による負傷リスク」は1.6倍。

 「④中等度の問題あり」と自己評価した人の場合、やはり①や②と比べて負傷リスクは1.7倍。自分の聴力について「⑤重大な問題あり」の人々の場合は、同比で1.9倍にもなり、事故による負傷リスクの高まりを明瞭に物語っていた。

 今回の研究では、さらに注目すべき解析結果が導かれた。

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