「甘みのある糖質」はどれも同じ?(depositphotos.com)
一般的に、人間がエネルギーに転換し得る炭水化物を「糖質」と呼びます。糖質の中でいちばん小さな基本単位が「単糖」で、「ブドウ糖」「果糖」「ガラクトース」があります。それらが2つ繋がったものが「二糖類」で、「砂糖」「麦芽糖」「乳糖」などです。
これらには確実に「甘味」があります。しかし、単糖がたくさん連なると甘みを感じにくくなります。それが「でんぷん」などの「多糖類」です。今回は、「甘みのある糖質」について、それぞれ説明してみます。
[an error occurred while processing this directive]生命の基本エネルギー「ブドウ糖」は「糖新生」で十分に間に合う
「ブドウ糖(グルコース)」は、人間を含むさまざまな生物の血液・体液の中に含まれている単糖です。人間でも、ニホンザルでも、オオカミでも、ヤマネコでも、ヤギでも、ウシでも、つまり「雑食」でも「肉食」でも「草食」でも、食べ物に関係なく、活動的な哺乳類の平常時の血中ブドウ糖の値(血糖値)は100mg/dl前後に保たれています。生命維持にとても重要な物質で、実際、脳はブドウ糖を好みますし、赤血球はブドウ糖でしかエネルギーを得られません。
糖質を摂取しない「肉食動物」でも、血糖値が一定に保たれているのはなぜか? それは、アミノ酸を原料に脂質をエネルギーにして、肝臓などでブドウ糖を合成しているからです。これを「糖新生」と呼び、私たち人間の体内でも常に起こっている現象です。ですから、糖新生能力が正常な人であれば、糖質を摂らなくても死にはしません。
このことから「糖質を摂らないと低血糖で脳が機能しなくなる! 砂糖をなめろ! 米を食え!」と叫ぶ人たちがいかに非科学的な考えかがよくわかります。
また「糖質制限して糖新生すると、筋肉がブドウ糖に換えられて痩せ細り、サルコペニアになるから危険だ!」と叫ぶ人たちもいますが、その理屈だと、肉しか食べないヤマネコやオオカミなどの肉食獣も、みんなサルコペニアに罹ることになるので、これまた変な話です。
なぜ「糖質制限」が有効なのか?
もちろん、経済性やエネルギー効率を考えると「生活習慣病を起こさない程度の糖質摂取」にはメリットもあります。また、糖質摂取だけで生きてきた「糖質エンジン」しかまともに回せない人に、いきなりの厳しい「糖質制限」は向いていません。高~中脂質・中~高蛋白質・低糖質の「山田式」ぐらいの糖質摂取量が、万人の落としどころだと思います。
ブドウ糖は自然界には単独で存在することが少なく、ブドウなどの一部の果物に果糖などと混在しています。ブドウ糖そのものの甘みは砂糖に比べれば控えめです。植物の組織内でブドウ糖が2つ繋がったものが、麦類の新芽に多く含まれる「麦芽糖(マルトース)」であり、水あめの甘みです。これもマイルドな甘みです。
ブドウ糖がたくさん繋がったものが穀物に多く含まれる「でんぷん(スターチ)」や「セルロース」で、動物はブドウ糖を繋げてグリコーゲンという形で肝臓や筋肉に保存しています。
このようにブドウ糖は体にとって大事な糖であり、甘みも強くないので、たくさん食べてもよさげに見えます。
しかし、人間を含む哺乳類がブドウ糖を含む糖質を消化吸収すると、血糖値が上がり、それが上がりすぎると、血糖値を下げるためにインスリンが追加分泌されます。これを1日3食、朝昼晩、頻繁に繰り返すと、膵臓も疲れるし、内臓脂肪が増え、メタボリックシンドロームに陥りやすくなります。だから糖質摂取は控えめにしましょうというのが糖質制限です。