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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第42回】

睡眠薬や危険ドラッグなどの「デートレイプドラッグ」による性犯罪に注意を!

気づかぬうちにお酒に睡眠薬を入れられ……(depositphotos.com)

 近年、集団で大量のアルコールを女性に飲ませ、意識レベルが低下した状態に陥ったのちに性犯罪に及ぶという事件が後を絶たない。カラオケ店、インターネットカフェ、ラブホテルなどの閉鎖的空間で、大学生のみならず研修医や医学生による刑事事件も明るみになった。

 最近ではアルコールなどに催眠薬などを混入させて、女性を昏睡状態に陥らせて、性犯罪に手を染める、より悪質な犯罪が増加している。本稿では、薬物が混入された飲み物、大量のアルコールと危険ドラッグを用いた犯罪について解説しよう。
 

アルコールと睡眠薬や危険ドラッグが併用され性犯罪

 

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 2012年に筆者が経験した、単身で他県より北海道に旅行に来た20歳代の女性患者――。繁華街で行きずりの男性と出会い、スナックで大量のアルコールを飲み、意識朦朧となってラブホテルに連れ込まれた。女性は男性が持参していた危険ドラッグ「ラッシュ(RUSH)注1」を吸引させられ、性犯罪に巻き込まれたが、男性はその後、ホテルより逃走した。

 女性は翌日、ホテルの従業員に昏睡状態で発見された。すぐに警察が駆け付け、病院に救急搬送された。酸素吸入や点滴などの治療を受け、数時間後には覚醒。患者の尿を採集したが、薬物の成分分析は困難であり、犯罪は立証することができなかった。患者は翌日には退院した。

 同じく2012年、30歳代女性が、知り合いの男性に大量の向精神薬「ロヒプノール」が混入されたビールを飲まされた。その後、女性は昏睡状態に陥り、知り合いの男性にレイプされた。男性はアルコールを飲まず、女性宅を出た。

 被害にあった女性は、翌朝も意識が朦朧として、頭痛、嘔気、眩暈、倦怠感などを訴え、自分で救急車を要請。搬送後に点滴などの治療を受けた。患者の尿と血液を採集したが、薬物の同定はできなかった。1日ほど入院したのちに意識は回復し、諸症状も消失したため退院した。 

「デートレイプドラッグ」とは?

 「デートレイプドラッグ」とは、睡眠薬や危険ドラッグなどを服用後、あるいはこれらの薬をアルコール類に混入させ、一過性に意識レベルが低下した状態下で、被害者が抵抗できない状態にさせて、性犯罪などの悪質な犯罪に及ぶときに用いられる薬物の総称だ。アルコールとの同時併用は、薬物の催眠作用などの効果を増強させる。

 代表的な薬物は、幻覚剤のGHB(γ-ヒドロキシ酪酸)や睡眠薬のロヒプノール、サイレース、フルニトラゼパムがある。

 米国では危険ドラッグ扱いとなっている薬剤が多いが、我が国では依然として精神科や心療内科などの医療機関で広く処方されている。また最近ではインターネットでの売買が容易に可能であり、誰でも簡単に入手でき、悪用されやすい環境にある。

 これらの薬剤は、服用後1~2日で体外に排泄されるため、性犯罪の立証には、尿や血液の早期の採集が必須となる。また薬剤判定の簡易キットでは検出できず、特定の分析施設での精密検査が必要なことが多いので、刑事事件として扱われることが難しいのが現状である。

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