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【連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第20回】

慢性片頭痛患者の30%以上が「気分障害」や「うつ病」を併発している?

「片頭痛」と「うつ病」と「自殺」には関連性がある(depositphotos.com)

 「頭が痛い」という「ことわざ/慣用句」は、誰が言うでもな、皆さんも知らずに使っていると思います。その意味を調べると、辞書には「心配ごとや悩みごとで頭が痛くなる程に苦しむこと、心配などで思い悩む様子を意味する表現」と表現されています。

 この心配や悩みごとが積み重なり思い詰めると、「頭痛」だけでなく、学校や職場に行けなくなったり、勉学や仕事が手に着かなくなります。

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 さらにこの状態を放置しておくと症状が悪化して眠れなくなり、「うつ病」と呼ばれる状態になります。うつ病は「自殺念慮(自殺したいと思うこと)」や「自殺企図(自殺未遂)」、そして最悪のケースでは「自殺」にいたってしまう場合があることが知られています(文献1)。

 先日この悩みごとにつけ込み、神奈川県座間市で凶悪な事件が起こりました。たった8月〜10月の3ヵ月の間に、8人の若い女性と1人の男性の方が犠牲になりました。

 被害者のほとんどがツイッターに「自殺を望む書き込み」をして、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の中の誰かに助けを求めていたということです。きっとこの方達は、何かに悩んでおられ、同時に頭痛症状もあったのではないかと思います。ということで、今回は、頭痛とうつ病についてお話したいと思います。

慢性片頭痛の患者の30〜60%が「気分障害」や「うつ病」を合併

 片頭痛の中で最も「うつ病」と関係しているのは「慢性片頭痛」が有名です(片頭痛とは、月に15日以上の頻度で3ヵ月を越えて続く頭痛で、前兆のない片頭痛、あるいは前兆のある片頭痛の診断基準を満たすものを指す)。この頭痛は、特に精神疾患の中でも、うつ病と関係する報告が多いとされています。片頭痛が慢性化する危険因子として最も重要なものとして、精神疾患の併存やストレスの多い生活が上げられます。

 うつ病の合併や不安障害が危険因子となります。最近の報告では、慢性片頭痛の実に30〜60%の患者が、「気分障害」や「うつ病」を合併しています。一方、一般の人と比べると、片頭痛患者では、2.2〜4.0倍の率でうつ病を合併するとしています(文献2、3)。

 また、自殺企図を考える人は、女性が男性に比べて4倍多く、前兆をともなう片頭痛患者が多かったとも報告しています(文献3、4)。そして一般の人よりも片頭痛を持っている患者のほうが、自殺企図の頻度が高く、さらに片頭痛とうつ病性障害を伴う自殺傾向のリスクは、うつ病性障害だけを持つ人々と比較して有意に高かったと報告しています(文献3、4)。

 この他にも、自殺傾向を来す因子として、一人暮らし、タバコやアルコール消費量、不眠などが自殺傾向、リスクの上昇を示すとされています。世界中の頭痛専門医からアンケートをとった調査では、東アジア地域の自殺傾向が、アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、中東地域と比較して最も多いと報告されています(文献5)。

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