オンラインゲームで「糖尿病」が改善(depositphotos.com)
米ハーバード大学と米退役軍人省ボストン・ヘルスケアシステムのB. Price Kerfoot氏らの研究チームは、「2型糖尿病患者」が「糖尿病の自己管理について学習できるチーム対抗のオンラインゲーム」に参加すると、血糖コントロール値が長期にわたり改善する事実を確認し、『Diabetes Care』8月8日オンライン版に発表した。
発表によれば、研究グループは、経口血糖降下薬を服用しているにもかかわらず、ヘモグロビンA1c (HbA1c)値が7.5%(58mmol/mol;NGSP値)以上の2型糖尿病患者456人を対象に、患者の半数を患者教育用のオンラインゲーム参加群に、残りの半数を一般的な教育ゲーム参加群(対照群)にランダムに割り付けて6カ月間続けてもらった。
[an error occurred while processing this directive]患者教育用のオンラインゲーム参加群は、血糖管理、運動、長期的な合併症、薬物療法などに関する問題をメールや携帯アプリで週に2回、2問ずつ受け取った。患者は、問題に解答すると、正解と解説を確認でき、正解ならチームにポイントが与えられ、個人戦にも参加できる。
ゲーム開始時、6カ月後、12カ月後のHbA1c値を測定したところ、患者教育用のオンラインゲーム参加群のHbA1c値は、ゲーム開始時から12カ月後に0.74%(8mmol/mol)低下したが、対照群では0.44%(5mmol/mol)の低下にとどまった。特にHbA1c値が9.0%(75mmol/mol)を超える患者群のHbA1c値が最も低下した。
論文筆頭著者のKerfoot氏は「自己管理教育用のオンラインゲームに少しの時間を費やすだけで、2型糖尿病患者の健康に大きな影響を与える可能性がある。新たに薬物療法を開始した場合と同程度のHbA1c値の低下が認められたからだ」と説明する。ただ、研究開始から1年後の血糖値は目標値に届いていないものの、オンラインゲームをさらに続ければ、臨床的に意義のある血糖値の改善につながる可能性が強いという。
研究を指導した米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院内科副部長のPaul Conlin氏は、オンラインゲームは学習に役立つだけでなく、参加した患者はゲームの時間を楽しみ、約9割が今後も続けたいと希望していた。この新たな認知行動療法(cognitive behavior therapy:CBT)のアプローチは、糖尿病以外の慢性疾患にも応用できるだろう」とコメントしている。