ひきこもりや社交不安障害でも安心して受診できる(shutterstock.com)
「5大疾病」のひとつとされ、もはや誰でもかかりうる病気となった「精神疾患」。その治療は長い期間にわたることが多いため、通院には負担がかかるのが常だった――。
そんな精神科の診療をオンラインで行なうことを可能にし、通院負担を軽減する取り組みを始めたのが、2016年1月に開院したばかりの新六本木クリニック(東京都港区)だ。画期的なオンライン診療の詳細について、院長の来田誠医師に聞いた。
[an error occurred while processing this directive]オンライン診療が可能になったきっかけは?
――オンライン診療を始めようと思ったきっかけは何ですか?
私はこのクリニックを開く前は、奈良県の診療所で院長をしていました。児童や思春期の患者さんが多かったのですが、ひきこもりや不登校で、途中から診察に来られなくなってしまい、治療が中断してしまう患者さんが少なくありませんでした。
一方、仕事で帰りが遅くなってしまい、診療時間に間に合わない患者さんもいました。また、そもそも医療機関を受診するタイミングが遅く、「ここまで悪化するより前に、もっと早く来てくれれば」と思う患者さんも少なくありませんでした。
やはり通院というのは煩わしさもあるものなので、<やめる理由>が何かあると、どうしても来なくなってしまう。できるだけ通院のハードルを下げる仕組みとして、オンライン診療の可能性を探っていました。
――そのオンライン診療が可能になったは、昨年の厚生労働省の<ある通達>がきっかけだったそうですね。
平成27年8月に出された「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」という通達です。これは平成9年に出された通達の改正なので、まずは平成9年の通達について説明します。
当時はインターネットも十分発達しておらず、主にテレビ電話を通した遠隔診療を想定していました。この通達では、遠隔診療ができるのは「離島」や「へき地」で、なおかつ症状が安定している患者に限っています。適用できる病気も示されていますが、そこに精神科は入っていませんでした。
ところが昨年8月の通知では、これらはあくまでひとつの例示に過ぎないことになりました。この通達を受けて、医療システムの提供を行なっている旧知の会社「メドレー」に遠隔診療システムの開発についてアドバイスを行いながら、開院に向けて動き出したのです。